1970年代に多くの人気時代劇に出演した火野正平は、藤田まことや勝新太郎、鶴田浩二など今は亡きスターたちと共演してきた。スターたちを間近で見た思い出を火野が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏の週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。
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1977年、火野正平は『新・必殺仕置人』に出演、藤田まこと、山崎努、中村嘉葎雄の殺し屋チームの情報屋を演じている。
「山崎さんや嘉葎雄さんが『火野正平を更生させる会』とか作ったんだよ。あの頃の俺はスキャンダルだらけだったから。
でも、その言葉はそっくりあの人たちに返したいわ。酒飲んだら行儀悪いし、台本はすぐに直したがるし。当時の山崎さんは『俺の役はこうこうこうだ』って紙に書いてきたこともあるからね。もちろんそれで『念仏の鉄』というキャラクターができたから、あの人としては大成功なんだろうけど。
藤田さんは『凄い』『凄くない』とか、そういうのと違う所にいる人だと思った。『凄い』と思わせちゃいけないんじゃないのかな。普通のオッチャンだから、あれだけ一つのシリーズを何十年もやれたんだ。しかも、その時代ごとに主役でずっとやり続けることができた俳優はいないよね。テレビの申し子、テレビが生んだ最大のタレントだよ」
『新・仕置人』四十話「愛情無用」では自ら劇中歌を歌った。