「信頼」は地に堕ちた。不適切会計問題が次々と明るみに出た東芝株には売りが殺到し、問題発覚前の3月末に530円を超えた株価は、7月13日には363円まで下がり、年初来安値を更新した。
無理もない。「不適切会計」の額は、当初発表された500億円から2000億円に増大。おまけに田中久雄社長ら経営トップが、利益の水増しや損失隠しを促していると受け止められる内容のメールを送っていたことが連日報道された。
誰もが違和感を持つのが、この事件を新聞・テレビが終始「不適切会計」と報道していることだ。
一連の経理操作が事実なら、これはもはや「社内の経理ミス」ではなく、株主や投資家を裏切る“粉飾決算”だ。調査を進めていた第三者委員会は、すでに同社の利益の過大計上につながる会計処理は「意図的に行なわれた」と認定する方針を固めている。事実上、会社ぐるみの粉飾決算であったと判断された形だ。
事件の発端は、今年2月にもたらされた証券取引等監視委員会(SESC)への内部通報だった。「インフラ関連事業会計に不正行為がある」というもので、SESCから説明を求められた東芝は社内の特別調査委員会で調査。その結果、5月に「2012年3月期から2014年3月期まで約500億円の営業利益がかさ上げされた可能性がある」と公表したのである。
だが事態はそれでは収まらなかった。続く5月中旬、社外の第三者委を設置し、半導体やテレビなど、残る主要事業に調査を拡大。すると過大計上された利益は1500億円、2000億円と膨らんでいった。