1518億円に及ぶ不適切会計処理が発覚し、組織ぐるみの利益水増し工作が疑われている東芝。だが、7月21日に開かれた記者会見では、経営陣の一斉辞任が発表されたものの、田中久雄社長が関与を頑なに否定するなど、責任の所在は分からずじまいだった。
不正会計を調査した第三者委員会は、利益至上主義に走った佐々木則夫前社長(副会長)だけでなく、田中社長も2013年8月ないし遅くとも2014年3月ころには利益の嵩上げを認識していた――と報告している。
にもかかわらず、田中社長は会見で「第三者委員会の調査報告書は真摯に受け止める」と繰り返しながらも、「私自身は不適切な会計処理がされていたとは認識しておりません」とキッパリ。部下に対して不正を指示したのではないか、と詰め寄る記者の質問には「ございません!」と語気を強める一幕もあった。
この期に及んで責任逃れとも取れる発言に終始したのはなぜか。
「もちろん田中社長も各部門に予算の必達目標を挙げさせてプレッシャーをかけていたのは事実だが、『チャレンジ』と称して不正会計をせざるを得ない状況に追い込んだのは、不仲で有名な歴代トップの西田厚聡氏(相談役)と佐々木氏。むしろ自分は二人の権力争いに巻き込まれた被害者だという不満が強いのだろう」(全国紙記者)
事実、パソコン事業において、2012年度期末に当時の佐々木社長が「残り3日で120億円の利益を上げるように」と社内に指示し、パソコン事業を取り仕切っていた当時の田中氏が検討結果を報告したとされている。
この点について、記者から「なぜ常軌を逸した利益改善要求に対し、経営陣にNOと言えなかったのか」と問われた田中氏は、「大変申し訳ないが、回答を差し控えさせてください」と答えるにとどまった。代々続いた東芝の人事抗争と、それに伴うコンプライアンスの欠如は、外部からでは計り知れないほど根深いものだったのだろう。
いずれにせよ、東芝は今後、水増しを指摘された1500億円以上の損益修正に加え、金融庁からの課徴金納付命令や、東京証券取引所からの上場契約違約金支払い、その他、国内外の投資家から巨額の株主代表訴訟を起こされる可能性もある。