7月の中国の株式市場は、阿鼻叫喚の様相を呈した。6月中旬から7月上旬にかけて、上海・深セン両証券取引所を合計した株式時価総額は、日本円にしておよそ450兆円下落し、中国のGDPのほぼ3分の1が消滅した。7月下旬にもさらなる急落が起きた。
中国政府の金融捜査当局は、先物取引での悪意のある空売りが急落を招いたとみて、公安省は上海のある貿易会社の捜査に着手した。
そこで意外な事実が判明する。その貿易会社に大量の資金を与えて空売りを仕掛けさせたのが、「習近平の反腐敗キャンペーンによる逮捕を恐れて米国に逃走した上海閥重鎮の娘婿だった」(北京の共産党幹部筋)のだ。
その重鎮の名は戴相龍。中国人民銀行(中国の中央銀行)総裁や天津市長などを務めた党の大幹部で、2013年に政界引退した70歳の長老指導者だ。
戴は今年初め、習近平指導部が主導する反腐敗闘争の網にかかり、「『重大な規律違反』の容疑で身柄を拘束、取り調べを受けており、その事実が公表されるのは時間の問題」と華字ニュースサイト「博訊(ボシュン)」などは伝えている。
その戴の親族が“仕手戦”で株価を暴落させ、習政権を窮地に追い込んだ──つまり今回の株価暴落は権力闘争であり、取り締まりへの意趣返しである可能性が高いというのだ。
「次の権力闘争の舞台は7月末から8月初めにかけて開かれる北戴河会議だ。江沢民のほか、習近平ら太子党(高級幹部子弟)グループと対立する中国共産主義青年団(共青団)閥を率いる胡錦濤前主席ら党長老も参加するからだ」(前出の党幹部筋)