今年誕生から32年を迎えるカシオ計算機株式会社の腕時計・Gショックが順調な売れ行きを維持している。出荷台数は730万個(2014年度)と過去最高を更新中で、2015年度は800万個(目標値)、カシオ全体の連結純利益も330億円が見込まれている。この好調の秘密はどこにあるのか? 作家の山下柚実氏がリポートする。
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「17歳に火を点けろ」
ストリート系の若者を中心にアメリカでGショックブームが燃え上がったのは今を遡ること18年前、1997年のこと。その勢いが日本へ逆輸入され国内でも人気が爆発した。3万個売れればヒットという時計業界において、1997年の出荷個数は国内外あわせて600万個に達した。
「たしかにかつてのブームは凄まじいものでした。しかし、その後の沈み方もまた、すごいものがありました」と同社コーポレートコミュニケーション統轄部・宣伝企画担当部長の田中秀和氏(52)は振り返る。お祭り騒ぎは長くは続かなかった、と。
「4年後、一気に出荷個数が三分の一まで落ち込んだのです。ファッション性に依拠しすぎたために、飽きられるのも早かったのでしょう」
ブームが沈静化した社内には重苦しい空気が漂った。
「営業から研究開発現場までこの先どうしたらいいのか悩みました。もう一度原点に立ち戻り、Gショックのコア・アイデンティティとは何なのか、議論を尽くしました」
浮かび上がったのは、やはり「タフネス」という一語。Gショックの内部は中空構造をしていて、衝撃に強い。gravity(重力)の「G」とshock(衝撃)からその名は付けられている。
「これまでのように『壊れない』だけでなく、さらに『狂わない』『止まらない』という、いわば時計としての『究極の強さ』を追い求める方向性が固まりました」
そこで、電波で自動的に時刻を合わせ、太陽光で充電するという「電波ソーラー」機能をGショックに載せた。腕時計としての「アブソリュート(絶対的)・タフネス」を追求し始めた。第一次ブームから5年ほどが過ぎていた。