早実は清宮だけじゃない。甲子園取材歴20年のフリーライター・神田憲行氏は「男なら加藤に惚れろ」という。早実キャプテンのリーダー論と行動を紹介する。
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早稲田実業の清宮幸太郎選手に注目が集まっているが、対戦相手のバッテリーが、
「いや清宮よりあいつの方が怖いですよ」
と口を揃えて警戒する打者がいる。それが早実の4番で捕手、キャプテンの加藤雅樹だ。身長185センチ体重85キロ、堂々たる体格に精悍な顔立ち。もし清宮がいなければ女性ファンに騒がれただろう。
しかし試合の前後はいつも1年生の清宮の周りにテレビカメラが組まれ、報道陣の輪ができる。チームとしてやりにくさもあるだろうが、
「いえ、清宮に注目が集まればチームも注目される。緊張感持ってプレーできるのでいいことですよ」
そういい、
「清宮も周囲の反応に動かされているところがないので大丈夫です。ほんと図太い奴ですよ。たまにいじったりして遊んでます」
と笑う。
加藤がユニークなのは、キャプテンとしてのテーマを持っていることだ。
「みんなが僕の背中を見てくれていると信じているので、いつもポジティブでいること」
地方大会の決勝戦、甲子園での初戦、9回2死を取ってあとワンアウトで勝つというところでマウンドに行き投手に笑顔で話しかける。とくにリリーフで登板してくる1年生投手の服部雅生は「ほっとくと自分の世界に入ってしまうから」、積極に声をかける。
打つ方では自分で決めるような長打にこだわらずに、後ろの打者につなぐチームバッティングに徹する。2回戦の広島新庄戦ではセンター返しを中心に4安打を放った。
「大きいのを狙わずに、後ろにつなぐ姿勢を自分から発信したいです。4番がやればみんなもそうすると思うので」
加藤のポイントは「語る」のではなく、「見せる」ことだ。
「そうですね、言葉より見せる方が大事だと思っています。自分が泥臭く必死なところを見せるのがリーダーの役割だと思います」
最初からそういう選手だったわけではない。
「1年生のときは、クールに野球やるのが格好良いみたいに思っていたんです。クールに打って、自分がとにかく目立ちたい、そんな選手でした」
それが変わったのは2年生夏の西東京大会だった。2三振を喫して、代打を送られ、チームは敗れた。
「悔しかった。寝られないくらい悔しかったです。それで新チームのキャプテンに選ばれて、自分を変えようと思ったんです」