日本人の「がん」の中で最も多いのが胃がんだ。1年間で約13万人の患者が生まれ、5万人近くが亡くなっている。市区町村では「胃がん検診」が実施され、全国で年間約378万人が受診している(2012年度)。
その検診の内容が、来年4月から大きく変わる見込みだ。7月末、厚生労働省の検討会は、自治体が行なう胃がん検診の検診方法について、これまで推奨してきた「バリウム検査」のほかに、「内視鏡(胃カメラ)検査」も推奨することを提言した。
「検討会の最終報告は9月中に行なわれる予定です。それを受けて国会でがん検診指針の改正が承認されれば、来年4月から施行されます」(厚生労働省健康局がん対策・健康増進課)
自治体による検診は、個人がクリニックに行って検査を受けるよりも、自己負担が低く抑えられる(胃がん検診の自己負担額は自治体によって異なる)。来春からは検診で、胃カメラかバリウムかを選べるようになる見通しなのだ。
バリウム検査では、炭酸ガスで胃を膨らませた上で、硫酸バリウムを飲む。「ゲップを我慢しながら飲むのがつらかった」という記憶のある人は少なくないだろう。胃の内側に硫酸バリウムを付着させた上で、レントゲン撮影をする。そうすると、胃壁にできた襞(ひだ)や病変が画像上に凹凸として浮かび上がってくる仕組みだ。
一方、胃カメラによる検査では口や鼻から超小型カメラを差し込む。胃の内側の映像をモニターに直接映し出し、医師が病変を探していく。
注目すべきは胃カメラによる検査の「発見率」の高さだ。胃の粘膜にある早期がんの場合は凹凸が出ないため、バリウム検査でのレントゲン撮影だけでは発見しにくい。“毎年バリウムを飲んでいたのに、見つかった時には手遅れだった”というケースが少なからずあるのは、そのためだと考えられる。
それが胃カメラなら、鮮明なハイビジョン画像によって、モニターで胃の表面の色の変化まで確認できる。粘膜のわずかな変化を特殊な色素で強調する技術などもあり、早期段階の病変を見つけやすいとされているのだ。