日経平均が乱高下しているが、株式運用されている私たちの年金は大丈夫なのだろうか。経済学者で投資家の小幡績氏が、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が年金資金を株式市場で運用することの是非について解説する。
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GPIFとは、私たちの年金を運用している政府が監督する機関で、130兆円もの資金を運用する世界最大の運用機関です。公的年金(国民年金と厚生年金)の運用ということで、かつては非常に保守的な運用、つまり「あまり儲けないが、確実に資金を守る」という考え方で金融資産に投資してきました。
その結果、日本国債に資金の70%弱を投資し、残りの30%を日本株式、外国の国債、外国株式に向ける運用してきました。
このGPIFが近年急に注目を集めたのは、安倍政権になって大きく運用方針を変えたからです。資金の50%を株式で運用する方針に大転換されました。残りの35%が日本国債、15%が外国の国債となりました。
そもそも、70%弱を日本国債で運用していたのは、全額日本国債で運用した場合と同じ程度のリスクの範囲で運用しよう、という考え方をした結果でした。
全額日本国債で運用するのは一つの考え方です。130兆円もの資金がある以上、現金で置いておくのはもったいないから、何か利子のつくものにしておこう、としたときに「一番無難なのは日本国債だ。リスクがもっとも低い国債で、円建てだから為替リスクもない。国民のコンセンサスを得やすい」という考え方です。
しかし、全額日本国債というのは「もったいない」運用なのです。様々な資産で運用することによりリスク分散の効果が得られ、リスクを高めずに期待される平均運用利回りを高めることができます。
たとえば株が上がるときは、国債はそれほど値上がりしないことが多いです。また、日本の株式がいまいちでも海外の株式が上昇することもあります。違う資産であれば、違う値動きをしますから、全部同時に暴落はしません。
それでいて、平均的な利回りは日本国債よりも高い。だから「日本国債以外の資産も多少混ぜて運用しよう。全体のリスクを高めない中で、30%程度は日本国債以外の資産で運用して良さそうだ」といった試算をし、日本国債70%、その他の日本株、外国株、外国国債がそれぞれ約10%と決まっていたのです。
株式に多少投資することで、リスクは上げずに我々の年金の資金を増やすことができる。私たちにとってもいいことなのです。