右肘靭帯断裂の大怪我から2シーズンぶりに復帰した東京ヤクルトスワローズの館山昌平(34)。これまでに、トミー・ジョン手術と呼ばれる肘の靭帯再建術を3度も経験。その他に、肩関節、股関節など7度も身体にメスを入れ、全身には151針の傷跡が残っている。
最初にトミー・ジョン手術を受けたのはプロ入り2年目の2004年のこと。人間の前腕部には3本の腱があり、その真ん中はほとんど使われていないため、肘靭帯を断裂した投手のほとんどは、その腱を肘に移植する。館山も同様の手術をしたが、その腱も2013年の開幕直後に切れてしまった。
「2度目の手術では、右脚の内転筋を移植しました。ただ、僕の場合、肘の筋肉との相性がよくなかった。2014年のオープン戦で登板して、何とか二軍のマウンドには立てましたが、そこから先に進めなかった。初回は抑えられても2イニング目は打たれてしまう。スピードも140kmそこそこしか出なかった。
コントロールを重視するスタイルに変えようかと迷っていたとき、靭帯を覆っている筋肉が骨から剥がれてしまいました。90%までは戻っていたけれど、自分の信念を貫くために、残りの10%を求めた時に、肘全体の強度がついてこなかったという感じですね。
骨から剥がれただけなので、縫い直せば3~6か月で復帰できるという診断でしたが、ドクターと相談して全力で投げられる肘を目指すことにしました。より強い腱を求めて、一からやり直したんです」(館山)
3度目の手術は、左腕の腱から移植した。しかし、真ん中の腱は利き腕でないため細くて使えなかった。そこで、3本のうちで左側にある太い腱を選んで移植したが、腱を取った左腕の筋肉は皮膚とつながっていたため、ウエイトトレーニングをすると皮膚がこすれて内出血し、すぐに青く痣(あざ)ができた。