奇跡の100店舗100業態達成、食とエンタメの融合など、情熱と才気で業界を革新し続ける東証一部上場企業「ダイヤモンドダイニング」創業社長の松村厚久氏(48才)。ノンフィクション作家・小松成美による『熱狂宣言』(幻冬舎)では、熱く人を巻き込み、社員や仲間に愛される人物像が浮かび上がる。人の信頼を得る秘訣や社員の育て方について、松村社長に話を聞いた。
――アルバイト入社した若者に1億円を託してグループ会社の社長を任せてしまうという豪胆なことは、どうしたらできるのでしょうか?
松村:一生懸命やっていて能力がある人をすぐ見抜いているからです。ただ、僕と違う能力を持っているので僕には教えることができない。だから自分の会社を作らせて、資金的な援助はするけど、やり方、経営は自分たちでやれと完全に任せてしまいます。その方が彼らの力が発揮されるのです。
――人材を適所に配置したとしても、任せきるのは簡単ではないと思います。
松村:次の店舗を作りたいけど、副店長が育ってから次の店舗を作っている企業は多い。でもそれではスピードアップしないですよね。自分にはない能力を活かしてあげたいと思いますし、やっているうちに度胸もついてくる。若手を育てないと会社も育たないですよ。僕は任せすぎるので、いい意味で裁量制、悪く言えば投げっぱなしと言われていますけど。
――自分の方針に部下を従わせて動かしたがるトップは多いように思いますが…
松村:それによってダメになる会社はたくさんありますね。上に立つ人間の年齢の問題ではありません。社長が若くても、さまざまなものを常にインプットしていたらアイデアや策は出てくるし、人の能力や良さを見抜く力もつくと思います。僕は「クリエイティブは目から」とよく言いますが、映画をたくさん観たり、女性誌をたくさん読むとか、旅行へ行っていろんな風景を見るとか、常にいろいろなものをインプットしていれば、出すべき時にアイデアが出てくると思うんです。
全くインプットをせず、考えるだけ考えて業態を作っても、人の心に響く業態は作れないですよ。そうして失敗している会社はいっぱいあります。飲食に限らずですが、飲食は特に多い。特にカリスマ社長と言われる人は、一つ業態が当たるとそれをやり続けてしまう。ほかのものを作ろうとしたときに全て同じに戻ってしまい、新しいものを作れないんです。