安保法制を巡っては政府・与党からあまたの問題発言が飛び出した。総務官僚出身の参院議員で国家安全保障担当の礒崎陽輔・首相補佐官の「法的安定性は関係ない」発言は国民を心底呆れさせた。同氏は以下の流れでこの発言をした。
「政府はずっと、必要最小限度という基準で自衛権を見てきた。時代が変わったから、集団的自衛権でも我が国を守るためのものだったら良いんじゃないかと提案している。考えないといけないのは、我が国を守るために必要な措置かどうかで、法的安定性は関係ない。
我が国を守るために必要なことを、日本国憲法がダメだということはありえない。来年の参院選は、憲法改正が絡む話でしっかりと勝たなければならない。参院もできれば自民党で単独過半数を取りたい。その中で憲法改正を有利に進めたい」
法的安定性とは「法律の内容や解釈は簡単には変えてはならない」という法治主義の大原則だ。安全保障のために必要な措置なら憲法解釈をいくら変更しても違憲じゃないというのであれば、政権や国際情勢がかわるたびに法解釈もかわり、法治国家の根幹が揺らぐ。この発言で礒崎氏は国会で参考人招致され、与党内からも辞任論が噴き出した。
「法的安定性」というなら、礒崎氏以上にとんでもない発言をしてきたのが、高村正彦・自民党副総裁ではないか。
弁護士出身で外相、防衛相、法務相を歴任した高村氏は、砂川事件の最高裁判決(※注)から集団的自衛権の行使はできるとする“高村理論”を編み出して安倍政権の憲法解釈変更の理論的支柱となった。
【※注:米軍駐留の合憲性が争われた1959年の最高裁判決において、自衛権について「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうる」と言及された】
だが、小渕内閣の外相時代にはこう答弁していた。