2017年の世界遺産登録の候補地として注目を集める福岡の玄界灘の孤島・沖ノ島では、4世紀頃から9世紀末まで盛大な祭祀が繰り返されてきた。戦後、沖ノ島への本格的な学術調査によって約8万点の奉納品が出土し、すべてが国宝に指定された。その数もさることながら、種類もまた多岐にわたった。
沖ノ島からは銅鏡、鉄剣、勾玉など、古代の祭具が数多く発見され、この島が国家あげての祭祀場だったことを物語っている。純金製の指輪や金銅製の装飾品、ペルシアのカットグラス碗など、アジア大陸から船でもたらされた宝物も少なくない。
また、様々な土器や人形、舟形も含まれ、当時の日本と世界を結ぶ証として、沖ノ島は「海の正倉院」と呼ばれようになった。現在、これらの宝物は九州本土の辺津宮にある「神宝館」に所蔵、展示される。
驚くべきことは、発見された宝物は「発掘」されたのではなく、表面採集──置かれたものを拾い集めたにすぎないという事実である。今も島を歩けば散乱した土器の破片を目にすることができる。そして、想像を超える数の宝物が、まだ土中深く眠るといわれている。
写真■宗像大社提供
※週刊ポスト2015年10月9日号