かつて若者や女性、主婦らを中心に「街乗りの足」として普及していた50ccの原付バイク(原動機付二輪車)。ピーク時の1982年には約278万台の市場規模があったが、2014年は約23万台と10分の1以下まで落ち込んでいる。
“原チャリ離れ”を招く大きな要因となったのが、1990年代に登場したヤマハ発動機の『PAS』に代表される「電動アシスト自転車」の存在だ。免許がなくても気軽に利用できるうえに、モーターでペダルを踏む力を補助してくれる利便性の高さで、原付バイクから乗り替える人が続出した。
ジャーナリストの福田俊之氏がいう。
「原付バイクを手放した多くは女性です。ヘルメットの着用でヘアスタイルが乱れるのが嫌という人や、エンジン音のうるささやガソリン臭が苦手といった声も根強かったため、主婦層をはじめとする原付ユーザーは、急速に電動アシスト自転車へと移行していきました。自転車のモーター性能が飛躍的にアップしたことも普及を後押ししました」
いまや、電動アシスト自転車の国内販売台数は年間50万台に迫る勢いで、10年前の2倍以上になっている。また、市場調査会社の富士キメラ総研によれば、その人気は日本にとどまらず、韓国や台湾、ヨーロッパなどで需要が拡大。世界市場は2030年に現在の倍となる367万台、2065億円の規模を予測しているという。
しかし、ここにきてホンダ、ヤマハ、スズキの国内バイクメーカーが、機能性やデザイン性を高めた原付バイクで復権を狙っている。
ホンダは16年ぶりにブランド名を蘇らせた『タクト』に続き、燃費性能を高めて価格を20万円以下に抑える予定の『ジョルノ』など、新型車を続々と投入。これまで中国やベトナムで原付バイクのほとんどを生産していた体制を、円安の影響もあり“日本製”に戻す方針だ。
ヤマハは第4弾モデルとなる電動バイク『E―Vino』を8月下旬に発売。屋内コンセントのフル充電約3時間で29km走行できるという機能性を重視し、都会に住む10~20代の女性をターゲットに販売攻勢をかけている。
スズキは収納スペースを大きく設けた『レッツバスケット』や、1リットルあたり53.8kmという低燃費を誇る『アドレスV50』を相次いで発売。
また、10月下旬より開催される東京モーターショーでは、軽自動車のヒット車種『ハスラー』の原付版(ハスラースクート)をコンセプトモデルとして展示する。スズキ広報部は、「発売するかどうかはモーターショーでのお客様の反応を見て決める」というが、ネット上では早くも〈かわいい〉〈デザインがオシャレ〉と話題を呼んでいる。