三井不動産グループである三井不動産レジデンシャル(ほか1社)が2006年に分譲したマンション、「パークシティLaLa横浜」のいわゆる「傾き」問題が大きな話題となっている。
現在、詳しい原因究明や補償・建て替えも視野に入れた協議が続けられているが、施工を請け負った旭化成建材による杭工事の“データ偽装”が次々と発覚。業界最大手が犯した過ちの代償は計り知れない。
『2020年マンション大崩壊』などの著書がある不動産コンサルタントの牧野知弘氏(オラガHSC代表)が、問題が起きた背景と今後の影響について解説する。
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今回のマンションと同じ横浜市内では、住友不動産が分譲した「パークスクエア三ツ沢公園」でも施工ミスによる建物の傾きが話題となったが、今回は建物の規模、杭打ちの際の施工側の「データ偽装」の疑いなどの問題を含め、社会に及ぼした影響ははるかに大きなものとなっている。
マンション分譲事業は「利幅の薄い」ビジネスである。デベロッパーにとって一棟のマンションを分譲しても純利益は5%から10%程度。したがって少しでも利益を捻出しようと建設費を極限まで圧縮するために徹底したコスト管理を行う。
コスト削減要求を受けたゼネコンは、下請け業者にその負担をかぶせるという構造にある。そんな中で生じたのが今回の事件かもしれない。特に本建物が建築された2006年から2007年、ゼネコンは受注が少なく、「利幅の薄い」マンション事業でも受注せざるをえない環境にあったと思われる。
建物構造に直結する「杭打ち」は通常は定められたボーリング調査を行うことで正確に支持層に杭を打ち込むことができるはずだ。データの偽装をしたとすれば、この「極限までのコストの切り詰め」によるものと考えざるを得ない。データ偽装に関して、デベロッパーがすべてをチェックすることには限界があるが、ゼネコンは確認できたはずである。コスト削減のプレッシャーの中でスルーしてしまった可能性がある。
また今回の事件で問われているのが、住民からの疑問、質問に対してどのような対応を行ってきたかという点だ。
報道等によれば、一年以上前から一部の住民より「傾いているのではないか」という指摘があったという。これに対して、会社として真摯に向かい合う姿勢が本当にあったのかどうかも疑問とするところだ。
もちろん住民からの問い合わせやクレームには様々な種類のものがある。住宅がクレーム産業などと言われる所以だ。住民からの問い合わせすべてに満足する対応を行うことには限界があるが、今回の事態を招く一因には、大企業などに多くみられる「事なかれ主義」あるいは「問題先送り」といった体質があったのかもしれない。
施工をした三井住友建設は施工ミスを認め、杭打ちを行った旭化成建材はデータ偽装の可能性も含め、同社が行った約3000か所にのぼるすべての物件で調査をかけると発表した。
また、三井不動産レジデンシャルは「全棟建替え」も視野に住民との話し合いに入ると宣言した。ゼネコンは建築基準法違反を厳しく問われることになるし、デベロッパーは売主責任を免れるものではない。ようやく対応がスタートしたといえる。