10月11日から始まったドラマ『エンジェル・ハート』(日本テレビ系)。冴羽りょう役で主演しているのが上川隆也だ。原作は大人気コミックだったため、この配役には放送前から賛否両論の声が上がった。しかし、いざ放送が始まってみると、冴羽りょうの再現率の高さに絶賛の声が上がった。上川が難しい役を見事に演じきれるのはなぜか? そこには彼のイメージと演技スタイルが関係しているという。テレビ解説者の木村隆志さんが分析する。
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『エンジェル・ハート』(日本テレビ系)の放送がはじまり、冴羽りょうの再現率や体脂肪率10%を切る肉体改造など、上川さんに称賛の声が集まっています。「もともと見た目が似ているから」「上川さん本人がアニメ好きだから」という分析を目にしますが、本質はそれら外見や嗜好ではなく、内面にあるとみています。
たとえば、上川さんが情報番組やバラエティー番組に出演しているとき、元気のない姿を見せたり、少しでもけげんな顔をしたり、ふざけたりした姿を見たことはあるでしょうか。私自身、ドラマの制作会見で何度かお会いしましたが、上川さんは常に言葉を選びながらこちらの目をしっかり見て、見どころなどを解説してくれました。
そのときにハッとさせられたのは、上川さんの姿勢の良さ。立っても座っても、身振り手振りを交えても、体の軸は一度としてブレませんでした。しかも、聞き手に合わせて体の向きを変えるなど、その姿勢だけで「心を開いていますよ」という誠実さが伝わってきたのです。
『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ系)の「ゴチになります!」にレギュラー出演していたときも、学生服をきちんと着てマジメな発言が多いことから「委員長」と呼ばれていましたが、まさにそのイメージ通り。そんな誠実さのイメージがあるからこそ、さまざまな役柄への振り幅が生まれるのでしょう。
たとえば、愛すべき変人・糸村聡を演じた『遺留捜査』(テレビ朝日系)、小学生の継父になる泥棒・俺を演じた『ステップファザー・ステップ』(TBS系)、心優しいゲイの保険医・梅田北斗を演じた『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(フジテレビ系)、天使と悪魔の二重人格を持つ弁護士・榛名圭一を演じた『青の時代』(TBS系)など、全く異なる個性的な役が演じられたのは、上川さん本人のイメージが「誠実さ」の1点に限定されているから。
色で言えば真っ白であり、「どんな色にも染まれる」「役を離れれば色が抜けて白に戻る」という、見事なセルフブランディングができているのです。冴羽りょうもそれらに匹敵する難役ですが、胸を突き出したような立ち方や、両手をポケットに突っ込む仕草などの細部まで忠実に再現しているのは、そんな誠実さの表れでしょう。
次に、演技のスタイルに目を向けてみます。いくつか出演作を挙げましたが、「どれも記憶に残りながらも、その役を引きずっていない」ことに気づくのではないでしょうか。つまり、視聴者である私たちに「上川さんはこういう俳優だ」「あの役の俳優さんだ」というステレオタイプな見方をさせない凄さがあるのです。