他に野球エリートが数多く集まる東京六大学野球のなかで、「最弱」といわれ続けた東大野球部が好勝負を連発して神宮球場を沸かせている。今年5月には連敗を「94」で止め、、9月19日に行なわれた対法大1回戦は5-2で勝利したのだ。東大野球部の特別コーチを2010年秋から務める元中日ドラゴンズの谷沢健一氏は、東大野球部の成長に目を細めてこう語る。
「全体練習は午前8時から昼まで。午後は個人練習です。僕は午後を中心に見ていますが、この個人練習の密度が濃くなりました。真っ暗になるまでティー打撃をしたり、野手がお互いにノックをしあったり。
午後になって僕が行くと、これから講義に出るので3時からの練習でバッティングピッチャーをやってもらえますか、などといった“予約”が入る。ちょっとだけ覗いていくつもりが、暗くなるまで帰れないことが多いんですよ(笑い)」
日本一の頭脳を誇る東大生が相手だけに、何事も論理立てての説明が必要。まずは納得させないといけない。ただ闇雲な練習にはついてこないという。
「ただ、基本を理解させて練習の意味に納得すれば、素振りだろうがノックだろうが、何千回でも受け入れる。頭で分かっていることが体に浸透するまでには時間がかかってしまいましたが、今はスイングも鋭く、打球も強くなりましたね」(谷沢氏)
投手陣に関しては、2年間特別コーチに招いた桑田真澄氏の薫陶も寄与している。桑田氏の指導で、投手たちがピッチングの組み立てを意識し、相手に打ち込まれなくなったのが大きいという。