世界でひとつの名前だから。かっこいいから――そんな理由で子供につけたキラキラネームが増えつつあり、問題となっている。その一方で今、「古い」「ダサい」と敬遠されていた「子」がつく名前をはじめ、昔ながらの名づけに回帰する流れが出てきている。
スマートフォン向けアプリ「赤ちゃん名づけ」を提供するリクルーティングスタジオが11月5日に発表した「2015年赤ちゃん名づけ男女年間トレンド」によると、漢字一文字の名前は相変わらず人気の中、9位に「文子」、19位に「徳子」が入り、「美由紀」も10位と懐かしい名前がランクインしている。
赤ちゃんの名づけランキングは、明治安田生命や雑誌「たまひよ」が発表しているものなど多数あり、採り方によって順位も、入る名前も全く違う結果になる。そのため、ひとつのランキングから人気の名前を判断することはできないが、キラキラネーム問題の反動で、名づけに古風な名前を好む流れが出てきていると、命名研究家の牧野恭仁雄さんは語る。
「文子や徳子といった名前は偶然ある期間に出てきた名前かもしれませんので、必ずしもこれらが復活してきた名前とは言えませんが、奇抜な名づけに対する揺り戻しを、私も今年あたりから感じています。1年ごとに集計して見ただけではわからないことも、名づけ相談をたくさん受けていますと、かなりリアルタイムに流れが変わってきているのはわかるのです。名づけの条件を聞くと、今まではいなかった、キラキラネームだけは絶対に避けたいと言う方はかなり増えています」(牧野さん、以下「」内同)
キラキラネームの定義は明確ではないが、いわゆる奇抜で読めない名前、人の名前の常識から外れた名前は今でも相当数増えており、現実に、学校で先生に名前が読めないと不愉快な顔をされたり、病院の受付で混乱が生じるなど様々な問題も起きている。
「奇抜な名前をつけたことで世の中から批判されたり、嫌みを言われたり、迷惑がられていると感じている人は結構いるんです。現実に困ると実感して、つけた後に後悔する親が多い。そういう例もたくさん出てきたので、だんだんとみなさんの考え方が変わりつつあるのかなと。名づけの際に、はっきり意識している人は出てきています」
実際、牧野さんが受ける名づけの相談では、古風な名前を希望する人が増えているという。男の子の名前では、一時期少なくなった「~太郎」「~一郎」「~之介」といった三文字名前を希望する人がかなり多く、音読みの名前も好まれているという。例えば、“ひろき”など音読みと訓読みが混じった名前ではなく、“こうよう”“りょうせい”といった音読みのみの名前だ。昔の芸術家や文筆家が使うペンネームのような、古風な雰囲気が好まれているのだという。