アップル社CEOのティム・クック氏 Reuters/AFLO
お金持ちほど節税に余念がないのは企業も同じ。世界中でビジネスを展開するグローバル企業ともなれば、あらゆる手段を尽くし、莫大な売り上げにかかる税を“合法的に”逃れている。その手法について、『〈税金逃れ〉の衝撃』(講談社現代新書)の著者で公認会計士・税理士の深見浩一郎氏が明らかにする。
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近年、グローバル企業の多くで、“アグレッシブ”な租税回避が行われていることが知られるようになってきた。
米上院の調査によると、2011年、アップルの米国での納税額は25億ドルだった。米国に払うはずだった法人税69億ドルを、世界的な節税対策によって半分以下に圧縮したのだという。
米国の市民団体「税金の正義を求める市民の会(CTJ)」は、2008年からの5年間で高い収益をあげた288社を調査している。それによると、26社は税制優遇策などにより実際に負担した法人税がゼロ、93社は実負担率10%以下だった。この調査報告では17社の多国籍企業における国際的な「租税回避」を指摘している。
それによると、アップルは米国での利益に対して36.5%の米国法人税などを払っていると主張するが、海外利益に対する税率はわずか3.4%だった。これを平均すると、全世界での利益に対しては14%の税率しか、かかっていない計算になる。
マイクロソフトは米国内で47.5%の法人税などを負担したというが、海外では8.8%(全世界平均18.2%)だった。同じくグーグルは米国内47.4%、海外3.3%(全世界平均17.3%)。
CTJの計算方法は、厳密には誤りがあるとの指摘もあるが、多国籍企業がタックスヘイブンといわれる税率の低い(あるいは法人税のない)国に利益を分散し、大幅な節税をしていることは間違いない。そこにはグローバルに展開する複雑な租税回避の仕組みが存在する。
そうしたグローバル企業の多くが採用する「ダブル・アイリッシュ・ダッチ・サンドイッチ」という節税方法を、ブルームバーグの記事(2012年12月10日付)などで報じられた内容から、グーグルを例に紹介しよう。これによって同社は2007年から2009年に31億ドル(約3660億円)もの節税に成功したとされている。