ビジネス

出光の「日章丸事件」 敗戦で自信喪失の日本人奮い立たせた

出光佐三〈1975年撮影) 共同通信社

「国のため/ひとよつらぬき/尽くしたる/きみまた去りぬ/さびしと思う」

 これは昭和天皇が出光興産創業者・出光佐三の追悼に寄せた歌である。日本人としての誇りを忘れず、外国と渡り合い石油と自信を国民に取り戻した出光の「外交」とはどのようなものだったのか。作家の水木楊氏が解説する。

 * * *
 敗戦後の占領下では、石油の元売り業者は石油の取り扱いを許可されたものの軒並み欧米の国際石油資本(石油メジャー)との不利な提携を強いられ、それを受け入れざるをえない状況だった。その中でも出光興産はそれを拒み自立を貫いた。

 出光は1951年に建造された自前の巨大タンカー・日章丸(二世)を駆って石油メジャーの目をかいくぐり、各地でゲリラ的に石油製品を買い付けては日本に輸入し、より安値で販売した。

 民族資本の雄として既得権益に対抗する出光の胸中には、主権回復後もなお独自の石油政策を持てない日本への憂いが渦巻いていた。そんな状況を自ら打開するために立てた計画が、イラン石油の買いつけだった。

 イランとの取引に成功すれば、国民に安価な石油を提供できる。石油メジャーに牛耳られた現状から、出光のモットーである消費者本位の石油政策への転換を促せる。そしてそれは、戦後日本の復興のためにはなくてはならないことだと出光は感じていた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
X子さんフジ退社後に「ひと段落ついた感じかな」…調査報告書から見えた中居正広氏の態度《見舞金の贈与税を心配、メッセージを「見たら削除して」と要請》
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレが関東で初めてファンミーティングを開催(Instagramより)
《新メンバーの名前なし》ロコ・ソラーレ4人、初の関東ファンミーティング開催に自身も参加する代表理事・本橋麻里の「思惑」 チケットは5分で完売
NEWSポストセブン
中居氏による性暴力でフジテレビの企業体質も問われることになった(右・時事通信)
《先輩女性アナ・F氏に同情の声》「名誉回復してあげないと可哀想ではない?」アナウンス室部長として奔走 “一管理職の職責を超える\\\"心労も
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
【女占い師が逮捕】どうやって信者を支配したのか、明らかになった手口 信者のLINEに起きた異変「いつからか本人とは思えない文面になっていた」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン