11月13日にパリで起きた同時多発テロの影響で、低迷するフランス経済の先行きを懸念する声も多いが、もっとも打撃を受けると見られているのが観光産業だ。
フランスは年間約8500万人の観光客が訪れる世界一の「観光大国」である。観光産業のGDP(国内総生産)は1500億ユーロ(約20兆円)に及び、全GDPの7%を占めるほど。
パリにはエッフェル塔、凱旋門、ルーブル美術館、ノートルダム大聖堂……など多くの名所があり、この時期はシャンゼリゼ通りが幻想的にライトアップされ、観光客を魅了する。
テロ後は一斉に臨時休業していたこれらの名所も、16日から徐々に再開している。フランス国民は、「いつまでも外出を控えていたらテロに屈することになる」と、懸命に日常の平静さを取り戻そうとしている。
しかし、観光客は当面、そうした雰囲気にはなれないだろう。
JTBやH.I.Sなど日本の旅行会社は、直近に出発が予定されていたフランスツアーの中止や無料キャンセルを発表。「また、いつ狙われないとも限らない情勢から、年末年始の予約キャンセル、行き先変更の申し出が相次いでいる」(大手旅行会社)という。
リクルートライフスタイルの「エイビーロード海外旅行調査2015」によると、日本人がレジャーで訪れる海外旅行先として、台湾、ハワイ、韓国に次ぎ4位にランクインしているフランス。このまま日本人旅行者が激減すれば大きな痛手だが、それよりも深刻なのが中国人旅行者のキャンセルだ。
『中国人の取扱説明書』の著書があるジャーナリストの中田秀太郎氏がいう。
「日本での“爆買い”に象徴されるように、中国人は無類のブランド好きということもあり、一流ブランド店が軒を連ねるフランスも人気の旅行先です。
今年5月には天津に本部を置くティエンズ社の社員6400人が大挙してフランスを訪れ、パリで1300万ユーロ(約17億4000万円)を出費した“爆社員旅行”も話題となりました。
ただ、パリのテロを受けて、さすがの中国人も恐怖を感じているようです。すでに中国人旅行団が旅先からパリを外したり、ツアーの取り消しが出たりしている模様です。ネット上では『フランスには潜在的危険がある』『命をかけてまでの旅行はしたくない』といった声が飛び交っています」