中国が仕掛ける「諜報活動」は、大きくソ連型と中国型に分類できる。
公安当局関係者によれば、ソ連型は、自国の諜報機関で養成した諜報員をターゲットに接近させる、もしくは組織に潜入させて機密情報を入手する手法だという。この中にはハニートラップも含まれており、要人に色仕掛けで情報を得る、または行為に及んだところを写真に撮って脅すのだ。
だが、昨今の中国諜報活動には、変化が見られる。それが“バキュームカー”と評される、「なんでもかんでも情報を集積する」諜報活動である。
「諜報員の教育には時間とコストがかかる。そしてスパイが検挙されれば外交問題に発展する。そこで中国の工作機関は、ローリスクな手法に切り替えました。それが日本人社会に溶け込む在日中国人に協力を仰ぐこと。なかでも中国人留学生に諜報任務の一端を担わせている実態が近年少しずつ明らかになってきました」(公安当局関係者)
中国大使館には「教育部」というセクションがある。表向きは、日本に留学する約9万人の中国人学生の相談を受け、トラブル解決の任務を負っている。
だが、裏の顔を持つ。まず中国人留学生の動向を監視し、中国共産党政府に対して批判的な民主主義活動に関わっていないかを把握する。さらにその過程で得た日常業務や研究内容に至るまであらゆる情報は諜報活動に利用されているという。
「情報は玉石混淆ですが、たとえば、軍事転用できる技術の研究に携わる理工系留学生を見つければ、本国に報告するんです」(同)