11月下旬、三菱自動車が2016年度に予定していたスポーツ多目的車「RVR」のフルモデルチェンジを3年延期することが明らかになった。同社関係者が明かす。
「RVRは三菱自の販売台数の2割を占める主力車。モデルチェンジでは車両を軽量化し、燃費を改善したガソリン車と、家庭用電源で充電可能なプラグインハイブリッド車の2車種を発売する予定だったが、開発の遅れが響いて軽量化を実現できなかった。すでに販売計画まで発表されていたこともあり、損失額は少なくとも100億円を超えると見られる」
円安の追い風を受けて好調な業績を続けていた同社の今期上半期(4~9月)の経常利益は584億円。今回の開発遅れで、経営戦略の大幅な見直しは避けられない。
さらに社内に衝撃を与えたのは、関係者への処分の内容だった。11月1日付人事で、開発を担当していた部長2人に「諭旨退職」が発表されたのである(開発部門の執行役員は降格、相川哲郎・社長は役員報酬の一部を自主返納)。
諭旨退職とは、会社が決めた期日までに自主退社(自己都合退職)しなければ懲戒解雇となる処分。自主退社すれば退職金は支払われるものの、2部長は年収1500万円ともいわれるエリートサラリーマンの地位を失う。社内や業界内からは「損害は大きいとはいえ、業務の失敗でクビとは厳しすぎる」(自動車ジャーナリスト)との声も上がった。処分が厳しくなった理由を同社広報部が説明する。
「燃費や排ガス規制にも関わる軽量化は、自動車開発において極めて重要な問題。しかし、開発目標値の達成見込みが甘く、リスクの報告も適切ではなかった。会議でも開発の遅れが報告されておらず、職務の怠慢といわれても否定できない」
どの企業でも新入社員時代に叩き込まれる「ホウ(報告)、レン(連絡)、ソウ(相談)」のサラリーマンの鉄則を怠ったがための処分だったというのである(2部長はすでに自主退社)。