【著者に訊け】澤村伊智氏/『ぼぎわんが、来る』/KADOKAWA/1600円+税
「恐怖は人類最古の感情である」(byラヴクラフト)。また、「最近は夜も明るくて、妖怪たちの住み家がない」(by水木しげる)とも聞く。そして現代の闇は人の心にあるかにも思う昨今、堂々たる化け物エンタメに徹してみせたのが、澤村伊智氏の日本ホラー小説大賞受賞作『ぼぎわんが、来る』だ。
一見幸せに暮らす若夫婦〈田原秀樹〉と〈香奈〉に生じた溝や子を産み育てる環境の変化の隣に、澤村氏はぼぎわんなる怪物を造形し、彼らを襲う恐怖の体験や、沖縄のユタにルーツを持つ霊媒師姉妹〈比嘉琴子〉と〈真琴〉の活躍を描く。
実はこのぼぎわん、ハロウィンの仮装にも縁があり、安土桃山時代に伴天連(ばてれん)らが持ち込んだ特定の形を持たない幽霊の総称〈ブギーマン〉が転訛したとの説もある。はたまた江戸期の文献『紀伊雑葉』に〈ぼうぎま〉なる妖怪伝説があるとかないとか。わけのわからないものほど怖いものはない!
「要するに僕は『幽霊より人間の方が怖い』みたいな話や、お化けだと思ったら人間の仕業でした的なオチが好きじゃないんですね。怖いもの見たさの怪談好きとしてはやっぱり、出てほしいよなあって(笑い)」