経営再建中のシャープが、ついに“まな板の鯉”状態に追い込まれた。主力事業ながら赤字垂れ流しの元凶となっていた液晶パネル事業の切り離し(分社)を決断。そのうえで、テレビ向けの大型液晶部門を台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に、スマホ向けの中小型液晶を官民ファンドの産業革新機構にそれぞれ売却する交渉が進められている模様だ。
この先シャープが生き残れるかどうかは、まだ予断を許さない状況だが、もはや経営陣をはじめ、シャープ自身に当事者能力はない――とする見方が一般的だ。
「これまで銀行からの借り入れや公募増資、人員・資産のリストラを繰り返し、首の皮一枚で何とか経営破綻を免れてきたが、2015年9月の中間決算でも251億円の営業赤字に沈み、手元資金はカツカツに。来年3月には借金など5000億円にのぼる返済期限が訪れるため、この先の再建プランは銀行団に委ねるしかない」(経済誌記者)
液晶部門の売却先に関しても、産業革新機構が名乗りを上げたことで経済産業省など国の意向も無視できなくなった。同機構傘下には日立製作所、ソニー、東芝の液晶事業を統合させた国策メーカーのジャパンディスプレイがあり、そこにシャープを加えることで“日の丸液晶”の世界シェアを高めたい狙いがある。
しかし、ここにきてホンハイがシャープ本体にまで出資の幅や額を広げ、会社を丸ごと買収する案を画策しているとの憶測も出ている。エース経済研究所アナリストの安田秀樹氏がいう。
「確かに今のシャープは時価総額が4000億円程度で、2000億円もあれば会社の過半を買えてしまうほど株価が下がっています。
また、ホンハイのような中国メーカーは技術力よりも量産力を武器にしているため、シャープの持つ巨大な堺工場や亀山工場を取り込めれば、液晶パネルの製造からテレビの組み立てまで一貫生産できるようになります。そうしたメリットを考えると、ホンハイにとって2000億円は安い買い物といえます。
あとは国が液晶技術の将来性をどう捉えているかにかかっています。シャープが得意とする液晶パネル技術の『IGZO(イグゾー)』は、スマホでの採用が進む有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)パネルとの相性が良く、数々の特許を握っています。その優れた技術を中国や韓国などに流出させていいのかという懸念もあります」