(【前編】の続き)
自転車のプロロードレースは、国際自転車競技連合によって統括され、3つのカテゴリーが設けられている。下からコンチネンタルチーム、プロフェッショナルコンチネンタルチーム、そしてワールドチームで、現在、チーム右京が属すのは一番下のカテゴリーだ。今後、アジアなどの海外レースに参加し、勝利ポイントを得てひとつ上のカテゴリーに進むのが当面の目標だ。そうしないと、ツール・ド・フランスへの参加資格が得られない。
当然、上のクラスに上がるにしたがって、予算規模は大きくなっていく。優秀な選手をそろえ、チーム環境を整えなければならない。年間予算はチームでばらつきがあるものの、トップクラスのチームでは概して10億円は必要になってくる。スポンサーも不可欠だ。右京はモータースポーツで培ったノウハウを存分に投入し、チームを動かしている。
日本の自転車界においては、チーム右京の参入は「黒船」的なところもあった。チーム右京の畑中勇介は、右京をこう評す。
「モータースポーツで頂点を経験した方なんで、要求するものも高いし、勝負の世界の勘がある。何に対しても挑戦的で、良くも悪くも日本の自転車業界の慣習をぶち破ることも多い。既存の国内チームができなかったようなことをやっていますよね」
右京からすれば、それは、短時間でトップへと駆け上がるための手段でもあったのだろう。
「僕には小細工なしの正面突破しかないんです。スーパーGTの世界なんかから比べると日本の自転車界はぬるいですよ。前時代的な根性論が残っていたりする。ヨーロッパのチームと伍するためには、トレーニングの方法ももっと科学的であっていい」(右京)
今年、「Jプロツアー」で優勝したように結果もついてきている。明らかに日本の自転車界に新風は吹きつつある。右京自身の生活スタイルも、F1時代とは大きく様変わりした。
「ロードレースの活動資金に少しでもプラスになればと、ビジネスクラスやグリーン車での移動は一切やめました。クルマもプリウスに替えた。もう27万kmも走ってます。会社の床で寝ることもある。すべては選手優先です。そのかわり俺は絶対にツールに行きますから。
自信も覚悟も確信もありますよ。そのためには、エゴを捨て、自分がブレないで、自分がどうなりたいか、会社をどうしなきゃいけないかを周りにはっきり見せていく。あと、そこには、いつも愛がなきゃダメなんですけどね」