年末には大変混み合う宅配便。現在は、店頭でもオンラインでも、お歳暮は“全国送料無料”と掲げられていることが多い。そんな流れもあり、宅配便業界は繁忙期を迎えている。
しかし、身近でありながら意外と知られていない宅配便業界のこと。その歴史は古く、1892年に小包郵便法が公布され、公共事業として始まった郵便小包(現在のゆうパック)が起源といわれる。といっても、個人が荷物を送るためには梱包して郵便局や国鉄の駅まで持っていく必要があり、受け取るためにもそこまで足を運ばなければいけなかった。
そんななか、1976年にヤマト運輸が“電話1本で集荷、翌日配送”などと銘打って、個人を対象に「宅急便」を始めた。これをきっかけに、佐川急便、西濃運輸、日本通運など他社も宅配業界に参入し台頭していった。ヤマトのマークといえばクロネコの親子でおなじみだが、これは“親が子猫を運ぶようにていねいに届ける”というメッセージが込められているという。
あとに続いた業者も、その親しみやすさに共感したからか、カンガルー(西濃運輸)やペリカン(日本通運)など動物のロゴを用いた。シェア争いは“動物戦争”とも例えられ、各企業がしのぎを削ること約40年。2015年現在、宅配市場のシェアはヤマト運輸、佐川急便、日本郵便で約9割を占めている。
各社、時間指定、翌日配達、再配達はもちろんのこと、メールでの配達事前通知、複数個割引、荷物追跡システムといったサービスを次々と生み出している。
「昼間は私も夫も仕事で家にいないので、いつも20~21時の時間指定で配達してもらっています。いつもお願いしているから担当者の人も在宅時間を大体覚えてくれていて、午前中に時間指定しても、家を出る8時前までに届けてくれるから助かるんです」(都内在住の30代女性)
日本の宅配が大きく“サービス競争”へと舵を切ったきっかけは、2000年にアマゾンジャパンが“配送料無料キャンペーン”を前面に押し出し、サービスを開始したことにある。この黒船の台頭は今も宅配業界に衝撃を与え続けている。
ヤマト運輸、佐川急便などに“潜入取材”し、その実態をまとめた『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』(小学館刊)の著者で、ジャーナリストの横田増生さんは、その大きな動きについてこう明かす。