「六代目山口組」と「神戸山口組」に分かれた山口組分裂騒動は、異様な警戒と緊張感のなか年を越した。2016年、どちらの側からいつどのように仕掛けるのか。それとも、抗争せずに収束する、ヤクザの「禁じ手」があり得るのか。ともに暴力団の事情に精通する、ノンフィクション作家・溝口敦氏とフリーライター・鈴木智彦氏が対談した。
──抗争になるとすれば、六代目側が仕掛ける?
溝口:神戸側は、自分たちからは動きません。彼らは今回の離脱を「逃散」といっています。百姓が領主に抵抗するために別の土地に逃げることをいいますが、彼らは存続さえできればいいという立場ですから。焦燥感が生まれる理由がない。しかしながら、六代目側が仕掛けられるのか。
鈴木:難しいですね。抗争が起きるのなら、とっくの昔に花火が上がっていてもおかしくないのに何も上がっていないわけで、直系団体の中には明らかに抗争を避けようとしている雰囲気が感じられる。
溝口:要するに、(主流派・司忍組長の出身母体)弘道会以外の組は「やるなら、弘道会さん、あなたがやりなよ」という雰囲気。
神戸側の幹部に聞きましたが、もし六代目側が動いてきたら、報復するのではなくて、司組長の税金問題を破裂させると。六代目山口組の元総本部長で神戸側に移籍した入江禎・宅見組組長はその帳簿を持っているとされています。本当は神戸山口組もヤクザだから、自ら進んで警察に情報提供なんかしたくないわけですが。
鈴木:まあ、チンコロ(密告)になりますからね。
溝口:だけど、うちの若い者が一人でも傷ついたら、破裂させると、その幹部はいっていた。六代目側は「帳簿なんかない」といっていますが、帳簿なんか必要なくて、何月何日にいくら渡したというメモがあればいい。工藤會の時もそうでした(*注)。入江組長が六代目の金の管理をしていたのは疑いようのない事実なんだから。
【*注:九州・工藤會トップの野村悟総裁は2015年、傘下団体からの上納金をめぐる脱税容疑で福岡県警に逮捕された】
鈴木:極端な話、メモをでっちあげてもいい。
溝口:そう。メモは整ってなくていい。