「メキシコ移民はレイプ犯や麻薬ディーラーだ」「イスラム教徒の入国を全面禁止せよ」などと2016年米大統領選に向けた共和党候補指名争い前哨戦で数々の放言、暴言を放ち、「時の人」となった不動産王、ドナルド・トランプ(69歳)。彼がもし、大統領になったら日米関係はどうなるのか。在米ジャーナリスト・高濱賛氏がトランプ氏を追った。
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当初は「泡沫候補」と目されていたトランプだが、2015年6月に正式立候補してから支持率を上げ、2015年12月10日現在、全米レベルでは35%と他候補を大きく引き離してトップを走っている。
その発言は、共和党支持層の中の低学歴、中・低所得層をとらえて離さない。最近の「イスラム教徒入国拒否」発言を受けて、トランプ現象は海外でもインパクトを与え始めている。12月11日にはトランプのホームページが一時接続不能になった。国際ハッカー集団「アノニマス」のサイバー攻撃と見られる。
もしトランプが大統領になったら、日米関係、対中政策はどうなるのか筆者は“ツイート好き”なトランプに直接、質問を送る一方、米人記者らの協力を得て、遊説先のトランプに直撃を試みた。
ツイッターでのコネクトは出来たし、連日一方的なメッセージが筆者あてにも入り出した。が、質問には一切答えない。「Thank you for support」「Thanks general」。あとは最新世論調査の結果が書かれているのみだ。
政策担当スタッフを捜したが、トランプ陣営には政策担当もメディア担当もいない。
「すべて、自分ひとりでやっている。政策綱領もなければ、政策立案者もいない。米現代政治史で具体的な政策を作成せずに大統領選に出ている候補者は皆無、前代未聞だ」(米主要紙記者)
遊説に同行するアメリカ人記者に日米関係について直接トランプの考え方を取材してくれるよう依頼したが、「遊説する会場では報道陣は完全に隔離されて、トランプには近づけない。俺が一方的にしゃべるのをお前たちは書けばいい、といった態度だ」(前出の記者)
トランプは行く先々でメディアが飛びつきそうな発言を草稿なしに喋りだす。頭の回転は速い。自身が認めているようにニュース番組はよく見ているようだ。最新の国内外のテーマを取り上げる。
もっとも、「トランプが取り上げた事例の大半はあやふやな事実認識に基づくものか、意図的にそう思い込んでいるものばかり」(「ニューヨーク・タイムズ」記者)だ。
「オバマはシリア難民25万人を受け入れると言っている(筆者注:そうした事実はない)。テロリストを我が国に招き入れるようなもんだ」
こうした発言に、集まった聴衆はやんやの喝采を浴びせる。真面目な政策演説などとは程遠い“アジ演説”にすぎない。