昨年(2015年)12月25日、クリスマスムード真っ只中のお茶の間に衝撃的なニュースが飛び込んできた。その日会見を開いた千葉県がんセンター(千葉市中央区)は、早期乳がんの患者Aさん(30代)と進行乳がんの患者Bさん(50代)の検体(検査の材料となる血液や組織)を取り違え、誤った診断により、Aさんの右乳房を全摘出する手術をしたと発表。すでに患者2人と家族に謝罪し、院内に事故調査委員会を設置して原因を調べている最中だと報告したのだ。
同センターは日本で3番目のがんセンターとして1972年に開設され、2006年には、がん診療連携拠点病院に指定された(現在は指定外)。がん診療連携拠点病院は、国が指定する“質の高いがん医療を提供するため、地域の拠点となる病院”のことで、全国に約400か所ある。治療実績を見ると、乳がんだけでも初診患者数約450人、手術数447件(いずれも2014年度)と、その数字は日本でトップクラス。がん専門病院として長年にわたり役割を担ってきた。
しかし昨年4月1日、同センターはがん診療連携拠点病院の指定を外された。それは、同センターが2014年に起こした事故が関係している。2014年春、2008~2014年の間に腹腔鏡手術を受けたがん患者11人が、手術後9か月以内に相次いで死亡していたことが発覚。昨年7月に出された第三者検証委員会の報告書では、報告や管理体制の問題が挙げられ、「不都合な情報を表にしたくないというセンターの意識があった」と指摘された。
千葉県がんセンターは、会見で「徹底的に原因究明と検証を行い、すみやかに再発防止策を講じ、二度とこのような事故を起こすことがないよう努めてまいります」と、説明した。が、そもそも今回、なぜこのような事故が起きてしまったのか。
女性セブンが入手したのは、会見で配布された資料だ。そこには、事故が発覚するまでの経緯が記されている。それによると、Aさん(30代女性)とBさん(50代女性)の2人が、乳房に針を刺して細胞組織を採取する「針生検」の検査を受けたのは昨年10月中旬。Aさんは、それまでは極めて早期の「非浸潤性乳がん」だとみられていたが、結果は、転移を起こす可能性のある「浸潤性乳がん」とのことだった。