力士報奨金は地位による最低支給額が決まっている。出世が早くて昇進時に最低支給額に満たない者は昇進した段階で最低額までアップされる。横綱に昇進した時に150円、大関昇進で100円、幕内は新入幕すれば60円、十両では40円に引き上げられる。
陥落してしまったら昇進時にプラスされた差額分だけ減額されることになるが、それ以外には成績が悪かったからといってマイナス査定されることはない。持ち給金は負け越そうが、休場しようが減額されないのだ。そのため、例えば8勝7敗を2場所続ける力士と、下位で12勝3敗と大勝ちして次の場所に上位で3勝12敗と大きく負け越した力士では、前者は1円、後者は4.5円アップという差がつく。
つまり番付が大きく上がって大きく下がる“エレベーター力士”のほうが、上位で毎場所のようにギリギリ勝ち越して踏ん張る力士より報奨金は高くなる。
そのため長く土俵を務めれば持ち給金は増えていく。昨年7月場所後に40歳8か月(史上最年長)で引退した旭天鵬は、幕内在位99場所(歴代2位)、幕内出場1470回(歴代1位)などの記録を持っており、持ち給金は181.0円。最高位が関脇だったが、大関・琴奨菊(141.5円)を上回る数字だった。
「減額がないのはベテラン力士に有利。大関を陥落したり、幕内力士が十両に落ちても長く現役を続けるのは、積み上げた報奨金が保証されているためです。逆に幕下まで転落すると報奨金が支給されなくなるので、あっさり引退することが多い」(相撲ジャーナリスト)
そしてもう一つ、額に大きな影響を与えるのが「金星」である。史上最高の16個の金星を誇った安芸乃島の報奨金は、それだけで160円(64万円)に上った。
「歴代2位の12個の金星をあげた高見山は、横綱・輪島から7個を獲得して輪島キラーと呼ばれました。そのため審判部はなかなか両者を対戦させなかったと噂されたし、横綱在位8場所で12個もの金星を配給した琴桜は、協会から引退勧告を出されたともいわれます」(同前)
※週刊ポスト2016年1月29日号