受験シーズンのなか、コラムニストのオバタカズユキ氏は受験生に共通するある特徴に気づいた。本当なのか、どうなのか。
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受験シーズン真っ盛りである。特に東京の中学入試は、2月の1~5日に集中している。重たそうなカバンを下げた子供たちが、夜の9時、10時過ぎに、進学塾から飛び出してくる姿をしばしば目にする。お迎えの保護者のもとに駆け寄る子だけでなく、そのまま一人で足早に駅へ向かう子も少なくない。
中学受験は親の力が9割と言うが、いやいや、それは大人の一方的な見方ではないか。インフルエンザ予防の大きなマスクのせいで、どんな顔をしているのかいまひとつ分らないのだけれど、子供らの強い目ヂカラに、「ほう!」と感心させられることだってあるものだ。
はじめは親の意向でそうすることになった受験だとしても、なんだかんだ乗り越えていくうちに、自分の意志でゴールに向かうようになる。きれい事じゃなくて、受験が精神的な成長の機会となりえているケースも多いはずだ。塾帰りの「頼もしい」子供の姿を見かけると、そんなことを思う。
ただ、そのような中学受験生に関して、ひとつだけ引っかかっている問題がある。女子はそうでもないのだが、男子に小柄な子供が多すぎるような気がしてならない。
彼らの大半は12歳。統計をチェックすると、同年代の平均身長は150センチを少し上回っているのだが、どう見てもマイナス5センチ、マイナス10センチくらいの背丈の子が目立つ。もちろん、中学生かと見まがうようなLサイズの男子受験生もたまにいるのだが、やたらSサイズ、SSサイズが多い、と前々から気になっていたのだ。
しかも、である。去年は用あって、中高一貫校の説明会にずいぶん足を運んだのだが、その会場で見かける男子の身長と入試難易度とに相関関係があるとしか思えない。
いわゆる中堅校の説明会では、「メガネ率がけっこう高いな」というくらいで、受験生のサイズは気にならなかった。それが、難関校に行くと違った。メガネ率がさらに上がるだけでなく、全体的に背が低くなるのだ。最初は、その特定の難関校だけの傾向、あるいはたまたまその説明会の参加者がそうなだけ、と思ったのだが、別の難関校に行ってもSサイズの世界だった。でもって、またまた別の中堅校に行ってみると、そちらではMサイズが主流なのであった。びっくりである。
そして、もっと驚いたのは、とある大手塾を覗かせてもらった時である。有名難関校にターゲットを絞った特別コースの生徒たちが百人程集まっていたのだが、成績順に分けられたクラスごとの平均身長にも、相関関係があるとしか見えなかった。
たとえば、そのコースは20人ずつ、成績の良い者からA、B、C、D、Eの5クラス構成となっていたとする。すると、これが見事なぐらい、E→D→C→B→Aの順にサイズがダウンしていく。より正確に言えば、SではなくSSサイズの生徒の人数が違う。あの子はまだ3年生くらいだろ、と錯覚するような子が、上位クラスになるほど目立つ。
見学させてもらって、やたら小さいのがいるな、それに落ち着きがないな、と思ったら、その子はかなりの高確率で“すごく出来る子”だ。そういう子はEクラスにはいなかった。Dに1人か2人、Cにちらほら、Bクラスでかなり目につき、Aクラスでは過半がSサイズなのだった。
この受験学力と身長との反比例な相関関係。残念ながら、それを示すデータはない。でも、ネットでいろいろ検索してみると、私と同じ疑問を持っている人が方々にいた。そのほとんどは受験生や元受験生の保護者であった。代表的なのはこんな書きこみだ(以下、各事例はアレンジしています)。
〈息子がこの春から憧れだった私立中に通っています。先日、初めての保護者会があったのですが、そこで息子の同級生たちの背の低さに驚きました。小学校で真ん中より小さいほうだった息子が大きく見えたのです。それほど他のお子さん方が小さかったのです。いったいどういうことなのか。息子に聞くと、「俺もそう思う!」と言います。夫は、「受験勉強で養分吸い取られちゃったんじゃないか(笑)」と冗談にするのですが、私は笑えません〉
ネットでこの件に触れている人のほとんどは、母親だ。中には、次のように自分を責めている人もいる。
〈うちの長男は、難関校とされている中学にご縁をいただきました。入学前の招集日に学校へ出向くと、同級生になる周りの皆さんの背が高くなく、戸惑いました。うちの長男も背が低いのです。もしや、それは激しい受験勉強のせいでは。成長期に眠りたいだけ眠らせてやらなかったから、身体が成長できなかったのかも。そう考えると、とんでもない過ちをおかしてしまったと、不安になっています〉