これまで食事による健康法はさまざまな方法が繰り返されてきた。たがそれは本当に科学的に「正しい」のだろうか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が考える。
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健康法にまつわるトレンドの移り変わりはめまぐるしい。例えば2000年以降の食べ物関連のダイエットのトレンドだけ見ても、「朝食抜きダイエット」に「プチ断食」、「グレープフルーツ」、「朝バナナ」「夜トマト」など数限りない。高度成長期からバブル時の「飽食」の揺り戻しかのような「減食」→「食材限定」というトレンドがあり、最近では「成分限定」といえるほど細分化されるようになった。
そして現在隆盛を誇っているのが、「糖質制限」だ。ダイエット法としての端緒は2003年頃、アメリカで起きた「アトキンスダイエット」ブームだった。日本でも「低炭水化物」「ローカーボ」などさまざまな名前でブームを繰り返しながら、徐々に定着。最近では外食産業でも、糖質制限の流れに沿うようなメニューが次々に開発されている。
例えば、昨年4月、長崎ちゃんぽんチェーンの「リンガーハット」が「麺半分」「麺なし」などの注文が増えたのをきっかけに、ちゃんぽんの”麺なし”版として「野菜たっぷり食べるスープ」が常設メニューになった。ハンバーガーでもバンズの代わりにパティでトマトやチーズをはさんだメニューを提供する店も現れた。
そして12月には牛丼の吉野家まで「牛皿一丁」という、牛皿に特化した新業態店舗を西新宿にオープンさせた。実験的な性格の店舗のためか、大々的にPRはしていないが、糖質制限フリークの間では話題となっている。
一方、アメリカでは「グルテンフリー」食が一大ブームになっている。2012年に42億ドルだった市場規模はわずか3年で147億ドル市場へと成長したという。もともとグルテンフリー食は、小麦に含まれるグルテンに過敏に反応するグルテン過敏症やセリアック病と言われる疾病への対応食が出発点だった。原因不明の症状に対する食餌療法を、アスリートやセレブリティが取り入れたことでブームにまで発展した。
そんな欧米でのグルテンフリーという追い風に乗って、日本の食品が人気になりはじめている。
2008年にアメリカでの販売に乗り出した、亀田製菓(新潟県)の柿の種は2013年から2014年の1年間で売上が1.5倍に。小林製麺(岐阜県)の米粉を使ったグルテンフリーヌードルはアメリカでブレイクし、いまやイギリス、フランス、スペインからの発注に追われているという。今年、ヨーロッパでグルテンフリー食品の成分・ラベル表示に関する新規制が適用されることもあり、日本貿易振興機構(ジェトロ)も「日本の食品加工企業にとっては市場参入に備える好機」とバックアップ体制を整えている。