次々と明らかになっていく清原和博容疑者と覚醒剤の関係。「球界の番長」はいつからその魔の手に誘惑され、手を染めることになったのか。その真実を知るキーマンがいる。本誌がかつて取材し、封印し続けてきたこの人物の重大証言を、公開する。
約10年ぶりに訪ねたその人物の家は、経年だけが原因とは思えない荒れ方だった。白い壁の一軒家。居間の窓ガラスは外されて放置され、庭にはゴミが散らかる。庭先に数か所設置された比較的新しい防犯カメラが、まだ人が住んでいることをかろうじて示していた。
住人の男が取材に応じた。髭も髪も伸び放題、大きくぎょろりと見開いた目が印象的である。部屋の中にもゴミが散乱していた。
「久しぶりやね。清原(和博)さんの件でしょ。ね、言うた通りやったでしょ」
男の名を仮にXとする。彼はプロ野球選手だった。既に複数のメディアに直撃取材されている人物だが、彼との「約束」により、ここではあえて名を伏せる。
1991年、オリックスに入団。左の中継ぎとして活躍し、1998年に巨人に移籍、2000年には優勝・日本一に貢献した。その後はメジャーリーガーを目指して渡米。2005年に球界を引退している。
だがその後、Xは道を誤った。2006年、覚せい剤取締法違反の罪で逮捕され、有罪判決を受ける。離婚問題のストレスから逃れようとした結果、薬に手を出してしまったのだ。
本誌は判決を受けた直後、Xに480分もの長時間のインタビュー取材を行なった。この時は裁判直後ということもあり、メモや日記を見ながらハッキリとした口調で語っていた。
本誌は当時、Xの語る内容について検証した。Xが実名を挙げた選手・球団関係者への当事者取材を行なうと明らかにしどろもどろになり、動揺を示す人物が少なくなかった。証言の信憑性は高いと判断し、記事を4回にわたって掲載した。
Xの告白は、自分が覚醒剤に手を染めた理由は、現役時代に「グリーニー」(※注)という薬を飲み始めたことが元凶であること、そして球界の薬物蔓延の実態を暴露するものだった。
【※注/アンフェタミン(覚せい剤取締法で規制を受ける覚醒剤に指定)系興奮剤。使用すると興奮状態となり集中力がアップするといわれるが、反動も大きく、強い依存性、食欲減退、不眠などを引き起こすとされる。現在は日米球界ともに禁止薬物に指定。名前の由来は錠剤が緑色であることから。カフェインとの相性が良く、コーヒーに混ぜて服用することが多い】