富山の薬売りの置き薬のように、オフィスにお菓子を置いて食べたぶんを支払う「オフィスグリコ」が始まったのが2002年3月のこと。それ以来、様々なものをオフィスに「置く」ビジネスが出現してきたが、最新の形は「置き弁」。オフィスの冷蔵庫に配置される「置き弁」はいずれも、約1か月など賞味期限が長い最新のチルド(冷蔵)技術を使った美味しい料理を提供しているのが特徴だ。
神田駅西口商店街にある株式会社ビーマップでは、2月から休憩室の冷蔵庫にチルドの洋食惣菜をストックしておき、社員がいつでも食べられるようにしている。事業推進本部の武田紘幸さんは「気づくと誰かが食べて冷蔵庫から減っています。グラタンが好きなので、よく利用しています」と人気ぶりを語る。
代表取締役社長の杉野文則さんは、いったん仕事が始まるとデスクを離れるのもままならないときもあるシステム開発という仕事の性質上、働く人の食と健康をどう保つかに心を砕いてきた。
「商店街そばで飲食店が多い立地ですが、最近は隣の大手町が職場の人や、秋葉原へ買い物にやってきた外国人観光客も大勢、昼食のために神田近辺まで訪れます。そのためランチ確保がますます難しくなりました。テイクアウトやコンビニのレジも大行列になります。弁当の注文なども検討しましたが、システム開発という仕事の性質上、急に外出することが少なくない。それでは注文数を確定するのが難しいんです。
それでも何かしたいと考えていたところに『ストック型ランチプロジェクト』の募集があったので参加を決めました。温かいものが食べられるのがいいですね。賞味期間が47日もあるから、じゅうぶん足りるだろうと思っていたらランチだけでなく夜食でも人気です。予想外だったのは、チルド惣菜が本格的な味で野菜もたっぷり入っていて美味しいこと。料理が趣味なのですが、真似してみようと思うくらいです」
ストック型ランチプロジェクトとは、食品メーカーのフジッコ株式会社がチルドレンジ惣菜「ベスタデリ」を期間限定で提供するプロジェクト。全5種類のうちポテトとマカロニのグラタンやほうれん草とトマトのラザニアなど3種類が提供され、オフィスの冷蔵庫にストックしておき利用する。昨年12月にプロジェクト募集をはじめたところ、予想外の反響があったとベスタデリのブランドマネージャーの入道知生さんはいう。
「ランチ難民という言葉があるように、社員食堂がない会社は働く人のランチについて悩まれているだろうとプロジェクトを始めました。ところが、食堂がある会社からも問い合わせをいただいて驚きました。プロジェクト開始と並行してランチをどこでとるか調査したところ、自分の席で食べる人が37%で最も多かった。一人でサッと済ませて自分の時間を持ちたいというニーズにストック型ランチプロジェクトが合ったのかなと思います。
食と健康というテーマで商品開発をしていますので、野菜をたっぷり使って食感がよいチルドのお惣菜シリーズを、生活にうまく取り入れてもらいたいですね」