「教員に部活顧問をするかどうかの選択権を」という若手教師らのネット上での訴えに、1万6000人以上が署名──そう報じたのは朝日新聞(2月13日付)だった。
署名を呼びかけたのは関東、中部、九州の30~36歳の公立中学教師ら匿名の6人で、「部活問題対策プロジェクト」のサイトを立ち上げた。呼びかけ文には「部活がブラックすぎて倒れそう……。教師に部活の顧問をする・しないの選択権を下さい!」と書かれている。
署名は2月19日時点で2万2000人を超えており、3月上旬までに馳浩・文科相らに提出する予定だという。部活顧問が大変なのはたしかだ。関東の公立中学教師がぼやく。
「とにかく人手不足なので、部活の多い学校ではほぼ全員が顧問にならざるを得ない。女性教師に男子の部活の顧問を任せにくい事情もあり、男性教師は競技経験がなくても運動部の顧問にさせられてしまう」
未経験の運動部顧問になると負担は重い。九州の公立中学野球部顧問が話す。
「野球だと保護者のほうが野球に詳しいため、“教え方が下手だ”と文句を言われる。しかも日曜日に試合がある時は朝7時集合で17時解散。なのに手当は1000円ちょっと。ブラック企業並みですよ」
だが、この顧問は嘆きつつも、部活の“教育的効果”を実感しているという。
「夏休みも土日も練習すると生徒は悪さをする時間がないので、生徒指導上の効果は大きい。実際、部活が盛んな学校は非行が少ないし、学校全体に活気がある」
土日もなく練習に打ち込み、接する時間が長いからこそ教師と生徒の結びつきも深くなる。甲子園を騒がせた“やくざ監督”として知られる開星高校の元美術教師・野々村直通氏が言う。
「私は自分の子供を遊びに連れていったことはないし、家族を犠牲にしてきたことも否定できないが、それは生徒のためだから胸を張れる。子供も、私が甲子園に出場したり自宅にOBなどが訪ねてきたりして、尊敬される仕事をしているのだと理解し、私の背中を見て学んでいたはず。“部活顧問が忙しいから家庭崩壊”なんておかしな話だ」