世の中にはおかしなことが様々なことがあるが、最近評論家の呉智英氏がおかしいと感じたことは何か。同氏は、アメリカのオバマ大統領を「黒人」とすることに異論を唱える。
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2月17日の参院憲法審査会で自民党の丸山和也議員がおかしな発言をして批判を浴びている。アメリカでは黒人の血を引くオバマ氏が大統領になっている、奴隷の子孫である、というのだ。この発言の真意がよく分からない。黒人差別の意図があったのか、奴隷の子孫でも大統領になれる国だという意味だったのか、それとも、ただ何となくこんなことを言ったのか。結局、おざなりの陳謝をして幕引きになりそうだ。
そもそも、オバマ大統領の実父はケニアからの留学生であり、アメリカの黒人奴隷の子孫ではない。丸山発言に差別の意図がなかったとしても、奴隷や黒人問題について無知のそしりは免れない。そして、日本人全体がこの問題について無知であることの象徴でもある。
黒人奴隷については、いずれ改めて論じよう。今回は、オバマ大統領が米国史上最初の黒人系大統領である、ということについて考えてみたい。
オバマ氏が大統領になった2008年、私は某大学で比較文化論の講義をしていた。ちょうどよい題材だと思って、新聞のコピーを学生に配り、オバマ大統領を黒人系だとすることに、君たちは疑問を感じないかと質問してみた。
学生の一人が手を挙げた。黒人系ではなく、アフリカ系と言うべきじゃないでしょうか。
そんなもの、同じだろ。アフリカのサハラ以南の原住民は黒人じゃないか。
また一人が手を挙げた。オバマ大統領のお父さんがアジア系だと聞きました。
それはお母さんの再婚相手。オバマ氏の継父の話だ。