元プロ野球選手でタレントの清原和博が覚せい剤取締法で逮捕されて以来、覚醒剤の恐ろしさが広く喧伝された。しかし、それだけでなく、清原自身が広域指定暴力団の幹部と偶然に出会えたことを喜んでいた様子や、みずから刺青を入れていたことなど、ヤクザとの関係にも注目が集まっている。暴力団事情に詳しいジャーナリストの溝口敦氏と鈴木智彦氏が、日本人とヤクザの独特な距離感について論じた。
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溝口:清原事件は、あらためて暴力団が捌く覚醒剤が世間に蔓延していることを知らしめました。密売人の逮捕にとどまり、入手ルートの全容解明には繋がらないと語る人もいますが、一罰百戒という意味では捜査当局は目的を果たしたと言っていいでしょう。
鈴木:メディアは清原とヤクザとの関係性に注目していますが、プロ野球選手がヤクザに近づくことが問題になるようになったのは、実は最近の話ですよね。暴力団排除条例が施行される前までは、暴力団の宴会でプロ野球選手を見かけることはよくありました。ヤクザにとっては、プロ野球選手や芸能人を連れて歩くのがステータスですから。
同時に清原のようにヤクザに憧れる日本人はどんな時代にも常に一定数存在して、自ら接点を持とうとする。
溝口:清原のヤクザへの憧憬は、社会人としての自信が持てなかった彼の幼児性の表れではないかと思うんです。清原は刺青を入れていましたね。それを聞いて、二代目竹中組の竹中武組長の話を思い出しました。刺青は、ヤクザとして生きる覚悟を示すために入れる人もいるけれど、気の弱い者がバカにされたくなくて入れるケースが多いというんです。
刺青を入れるには、まず下書きである筋彫りを入れます。刑務所に入るとき、筋彫りのままだと服役囚に半端者だとバカにされる。だから入所前に大急ぎで完成させる人もいる。刑務所でいじめられたくないというわけです。清原の刺青もそう。彼の人間的な危うさの象徴のように感じました。