過激な抗争が懸念され、実際に全国各所で抗争が勃発している。山口組分裂から約半年、「六代目山口組」と「神戸山口組」の衝突が急速に激化するなか、ついに警察は殺し合いを待たずに「抗争」と認定した。かつて抗争に乗じて「頂上作戦」と呼ばれる暴力団壊滅作戦を指揮してきた警察は、いま新たな勝負に打って出た。フリーライター・鈴木智彦氏が指摘する。
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実をいえば暴力団員の暴力性に、そう大きな組織差はない。どの組織もいざとなれば相手を殺害するだけの凶暴さを持っている。どこに違いが生まれるかといえば、トップの腹のくくり方である。
自分の人生を捨ててもそれに対する十分な見返りがあると判断できれば……たとえば家族の面倒をしっかりみてくれるという確証が得られれば、捨て身になる暴力団組員はどこにでもいる。
腹の据わったトップの存在が、若い衆を屈強な軍隊に変貌させる。だから警察は遮二無二トップの検挙を狙う。法解釈をねじ曲げても、トップに打撃を与えれば、暴力性が薄まることを承知している。
◆「特定抗争指定」という槍
また警察には改正暴対法による「特定抗争指定」というロンギヌスの槍を持っている。イエス・キリストの脇腹を貫いた聖なる槍同様、新設されたこの条項は暴力団組織に対するとどめの一撃になり得る。
長期化した九州・道仁会の内部抗争を押さえ込むため、2012年の法改正で暴対法に新設された「特定抗争指定」を受けると、公安委員会が定める警戒区域内で暴力団の行動は大きく制限される。
神戸山口組が指定暴力団となり、特定抗争指定になれば、組員らは両組織の本部及び、傘下団体すべての拠点に、掃除で立ち寄ることさえ出来なくなる。さらに対立する暴力団員への付きまとい、相手組織の居宅周辺をうろつくことも出来ない。仲間内で5人以上集まれば即逮捕だ。
なぜこれがとどめの一撃になるかといえば、現在の暴力団の結束力が弱いからだ。