マイナス金利導入から2か月弱――。史上最低の住宅ローン金利により、マイホーム購入を窺っている人も多いだろう。そこで、まず出てくる大きな選択肢が「マンションにするか、一戸建てにするか」だ。
一戸建てと聞くと「高嶺の花」のイメージが強いが、近年、都心の建売住宅でもよく見られる20坪程度以下の“ミニ戸建て”であれば、近隣の新築マンションと同等か、それ以下の金額で購入できるケースもある。
『新築マンションは買ってはいけない!!』の著者で住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、〈マンションorミニ戸建て〉の賢い選び方を解説する。
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住宅案内誌で年に数回は特集として取り上げられているのが「マンションVS戸建て」というテーマ。これは永遠に結論が出ない神学論争のようなものだ。しかし、論点を整理すれば違いは明確。結論から言えば「価値観の違い」ということになる。
まず、本来両者はエリア的にあまり競合しなかった。マンションは土地に限りがある都心部が中心。戸建ては土地に余裕がある郊外がその供給の中心エリア。従来、同じ予算で考えるのなら「狭くても都心や駅に近いマンションにするか、ちょっと不便でも伸びやかな戸建てを選ぶか」ということになっていた。
時々、共存して開発されている場合もある。それはだいたいが近郊エリア。ひとくくりの大きな土地があって、例えば「マンション500戸、戸建て150戸」といった具合に分けて開発される。こういった場合、戸建てのほうの価格が2、3割高くなるので、両者は競合しない。
ところが、最近の東京都心では珍しい現象が起きている。床面積割合で考えると、マンションとミニ戸建ての価格があまり変わらないか、むしろ戸建てのほうが安くなっているのだ。いったいどういうことだろう。
例えば、東京都新宿区だと80平方メートル程度の新築マンションを購入する場合、今は8000万円~1億円以上の予算が必要だ。ところが、3階建てのミニ戸建だと6000万円台から選べる。
その原因は、東京都心のマンション価格がバブル化してしまったからに他ならない。
2012年頃から東日本大震災の復興事業によって建築費が値上がりしていたところに、2013年初めからアベノミクスが始まり、新築マンション価格は値上がり傾向にあった。そして2014年10月、日銀の黒田総裁がぶっ放した「黒田バズーガ2」という異次元金融緩和によって都心のマンション価格は一気にバブル化した。
それを買ったのは相続税対策の富裕層と、円安によって殺到した外国人。この2つの「買い」勢力によって、都心のマンション価格は4年前に比べて軽く1.5倍以上になっている。しかし、それは「住むため」という実需による買いではない。購入の大半は投資と投機が目的だ。
一方、新築のミニ戸建てというのは常に「住む」ことを目的とした実需層に買われる。外国人が投資目的で戸建てを買うことはない。ましてや節税効果の薄いミニ戸建てを、富裕層が相続税対策に買うことはない。
都心の新築マンションはバブル化したのに、ミニ戸建ては堅実な需要しか生まれないので価格があまり上昇しなかった。その結果、都心では価格が逆転してしまった、というのが現状なのだ。