世界に向け経済成長を喧伝する中国。しかし経済評論家の三橋貴明氏は、GDPをはじめとする中国の経済統計の数字は「全く信用ならない」と指摘する。その統計の驚くべきカラクリとは。
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今年1月19日、中国の2015年の実質GDP(国内総生産)成長率は、前年に対して6.9%増と発表された。輸入が同14.1%減であったにもかかわらずだ。輸入がこれだけ減っていながら、GDPだけが6.9%も伸びるとは、常識ではありえない。
そもそも中国から発信される経済関連の統計指標は、中国の「最悪の輸出品」で、その実体は2種類しかないと考えている。
(1)「統計マジックにより実態がわからない指標」と、(2)「そもそも正しくない指標」の2つのみだ。
(1)の代表が失業率だ。中国は全土の失業率ではなく、都市部の戸籍を持つ「登録失業者」のみを数えた「登録失業率」しか発表しない。農民工(農村出身の出稼ぎ労働者)などの農村戸籍者の失業率は不明だ。
そして、(2)の代表が実質GDPの成長率なのである。
2015年の「GDP6.9%成長」が一発で嘘とわかる理由がある。「李克強指数」(*注)として電力消費、銀行貸し出しと並んで経済状況の目安となる鉄道貨物輸送量が、前年比15.6%のマイナスとなったことだ。2012年頃まで、中国の鉄道貨物輸送量(前年同月比)はGDP成長率より「少し低い」水準で推移していた。この時期は、リーマンショックを受けて中国共産党が実施した大規模経済対策の効果で、確かに実需も伸びていた。
*注/中国の李克強首相が「政府発表のGDPよりも信頼できる」と語ったとされることに由来する、中国の経済状況を推し量る統計指標。