「あの独特な“苦さ”が苦手」という20~30代の若者や女性らを中心に、ビール離れが止まらない。もちろん、人口減や高齢化などによる総需要の落ち込みも考えられるが、ビール系(発泡酒・第3のビールを含む)の国内出荷量は11年連続で縮小。1994年のピーク時と比べると4割弱の水準だ。
しかし、〈ビール離れ=アルコール離れ〉の現象が起きているわけではない。ビール売り上げのマイナス分を穴埋めするかのように好調なのが、「RTD」と呼ばれる低アルコール飲料である。
これは「Ready to drink」の略で、焼酎・ウォッカ類をベースに果汁や炭酸水を加え、栓を開ければすぐに飲めるチューハイやカクテル、ハイボールなどを指す。サントリーによれば、2015年の国内RTD市場は対前年比109%の1億4960万ケース(1ケース=250ml×24本換算)で、こちらは8年連続のプラス。過去最大の市場規模に膨らんでいるという。
缶チューハイに代表されるRTD飲料はすでに1980年代より登場していたが、特にここ数年成長が著しいのはなぜか。ビールメーカー各社が分析した消費者傾向には共通点がある。
〈自宅で食事をしながら“一人飲み”する20代の若年層に多く選ばれている〉
〈ビールより飲みやすく身近なアルコール飲料として、仕事や趣味の合間にも愛飲されている〉
若者のみならず、長く“ビール党”だった中高年男性まで取り込んでいることも、市場を押し上げる要因となっている。
「最近はアルコール度数が9%の『ストロング系チューハイ』のブランドも増えたので、ガッツリ酔いたい気分のときには最適。どのブランドもスーパーや量販店に行けば150円以下で買えてビールよりコスパがいいし、レモンやグレープフレーツなどサッパリした果実系は、脂っこい食事や洋食にも合う。
これまではビールや発泡酒を安売りのときにケース買いして、夕食時に2本飲むのが楽しみでしたが、いまは各社から出ているチューハイのレモンとグレープフルーツだけをバラで買い集めて飲む習慣に変わりました」(千葉県在住の40代会社員)
いまや、果汁の種類、アルコール度数、健康訴求(糖質・甘味料・プリン体ゼロなど)もまちまちのRTD商品は数えきれないほど発売されているが、「サントリースピリッツ、キリンビール、アサヒビールの大手3社の商品だけでRTD市場の約8割のシェアを占める」(業界関係者)という。