国際情報

「中国人元慰安婦11人」証言フィルムの信憑性

映画『太陽がほしい』HPより

 慰安婦関連資料のユネスコ世界記憶遺産登録を推進する中国が、プロパガンダを活発化させている。そうしたなか、中国人元慰安婦による証言が映画化され、昨年から日本各地で上映会が始まった。一体どのような内容なのか。

 * * *
〈(山西省の日本軍の駐屯地の)真っ暗なヤオトン(中国式の横穴住居)に監禁され、用をたすときだけ外に出られました。食べていないので何も出ないが、外に出たいのでトイレに行って背をのばす。太陽の光がほしかった〉

 現在、上映中の映画『太陽がほしい「慰安婦」とよばれた中国女性たちの人生の記録』のパンフレットにはこんな証言が掲載されている。

 映画は在日中国人の班忠義監督が20年かけて製作し、著書『声なき人たちに光を 旧軍人と中国人“慰安婦”の20年間の記録』の刊行と同時に全国で上映会が行われてきた。

 これらの作品には多くの「中国人慰安婦」が実名で登場。映画では11名が証言し日本兵を糾弾するが、その内容には疑問符がつく。

 例えば冒頭の証言をした劉面換さんは16歳の時、山西省で日本兵と漢奸(日本軍の手先の中国人)に拉致され、ヤオトンに監禁され何度も強姦されたというが、彼女のことを「慰安婦」とは言い難い。

 慰安婦は戦時下における「公娼」だが、この時期の山西省に公的な「慰安所」はなかったと考えられる。今回の映画と本では、山西省出身の多くの中国人女性が1942年ごろ強制連行されたと主張するが、評論家の黄文雄氏は、「信憑性は薄い」と指摘する。

「盧溝橋事件の翌38年、蒋介石最大のライバルの一人である閻錫山の山西省臨時政府が成立すると、日本軍の大部分は山西省から離れた。また、41年に大東亜戦争が勃発すると中国にいた日本軍は大挙して東南アジアへ移動し、山西省では中国共産党の八路軍によるゲリラ活動が活発になった。この時期、日本軍が組織的に当地で婦女を連行して慰安所を開くなど考えられない」

『月刊中国』主幹で中国から帰化した鳴霞氏も同じ見解だ。

「中国共産党系の河北人民出版社が97年に発行した『近代中国娼妓史料』には、戦時中に中国国民党軍の支配下にあった各地の慰安所の様子が詳しく書かれています。この学術史料は上下巻数百ページに及び、山西省・太原にあった娼館の記述もありますが、日本軍の慰安所に関する記述は皆無です。この地域で日本軍が組織的に女性を連行し、暴行した事実があれば、この史料に記載があるはずです」

 以上のことから、山西省で発生したのは、現地の漢奸と結託した日本兵が「私的」に犯した性犯罪と考えられる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト