来年予定されている消費税率の10%への引き上げが凍結される可能性が強まっている。その効果が真っ先に現われるのが為替市場だ。1ドル=120円突破も予想される。そして円安はそのまま輸出大企業の業績にはね返る。
1円の円安で上場企業全体の経常利益の総額は約1600億円増える計算となる。2016年3月決算の上場企業2346社の2015年度経常利益合計は3期連続で過去最高の45兆円と予想されている。増税凍結で10円円安に振れれば、為替要因だけで1.6兆円がプラスされる。50兆円超えも夢ではないのだ。
今年の春闘は、昨年とはうってかわって盛り上がらない。ベースアップと定期昇給を合わせた賃上げは月額平均6341円(連合第1次集計)となっている。16年ぶりの高い賃上げに沸いた昨年より大幅に低い水準だ。
高度成長期には、男性の平均賃金は1955年からの20年間で2.3倍(実質)になり、1980年代後半のバブル期は年収が5年間で約100万円上昇、物価変動を差し引いた実質ベースでも収入は約1割増えた。その後の長い賃下げ時代を生き抜いてきたサラリーマンには夢物語にしか思えないのではないか。
ところが、増税が凍結されると来年の景気後退は回避される。業績好調な企業は2016年度、2017年度も増益になるという見通しが立てば、経営者側も賃上げ抑制で内部留保を貯め込む経営から「社員の賃上げ→消費回復→生産拡大」という本格的な成長路線へと方針を転換することができる。そうなれば来年や再来年の春闘では、17年ぶりの賃上げ月額8000円台も期待できるということだ。
そのペースの賃上げがあと4年、五輪需要がある2020年まで続くとしよう。それだけで日本経済の景色は一変する。サラリーマンの5年後の年収は約50万円増え、男性の平均賃金(年収約524万円)をベースにすると実質1割近い増加になる。
バブル期に匹敵するハイペースの賃上げになるのだ。賃上げが消費を後押しし、日本経済は2020年の東京五輪に向けて、次第に沸騰していくことが容易に想像できる。