「下流老人」という言葉はもはや流行語から一般語になりつつあるほど世間に定着したが、実際にどこからが下流老人なのか、これまで明確に線引きした調査はなかった。その調査・分析を行なったのが三浦展氏である。
三浦氏は三菱総合研究所主任研究員などを歴任したマーケティング・アナリストで、11年前にベストセラー『下流社会』(光文社新書)で「下流」という言葉を世に出した張本人である。その三浦氏が上梓した『下流老人と幸福老人』(光文社新書)のなかで、今度は「下流老人」の実像を浮かび上がらせたのだ。
三浦氏は三菱総合研究所による最新のシニア調査や自身が所長を務めるカルチャースタディーズ研究所によるアンケート調査などをもとに高齢者の経済状況やライフスタイルを分析し、その結果から高齢者を「上流老人」「中流老人」「下流老人」の3つの階層に分類。さらにその3層間に横たわる格差の実態を明らかにした。三浦氏が調査の目的を語る。
「11年前に『下流社会』で予言した通りに日本人の経済生活の下流化が進んでいるが、とりわけシニア層、つまり『下流老人』の増加は当時の私の予測を超えるものがある。そこで今回は65歳以上の高齢者の状況の分析を試みました」
その結果わかったことは60代の実に34.5%の人が「下流老人」に当てはまるという現実である。
シニア調査によると、65歳以上の高齢者の金融資産総額は平均2772万円にのぼる。「そんなに持っているのか」と感じる人が少なくないと思うが、これは一握りの資産家が金額を引き上げているからに他ならない。1億円以上の資産を持つ上位3.3%の高齢者が資産全体の29.7%を保有しており、人口比率で最も多いのは資産「500万~1000万円未満」(15.1%)だ。
三浦氏はこの金融資産の額をもとに線引きをし、「2000万円以上」を「上流老人」、「500万円未満」を「下流老人」、その中間を「中流老人」に分類している。
「資産2000万円以上だと資産マイナス借金の額である純資産も2000万円を超えてくるため、老後を安心して暮らせる金額を有することになる。そこで、老後への不安がなくなる資産2000万円以上を『上流』と設定しました」(三浦氏)