国交省は3月14日、「マンション標準管理規約」改正を発表した。新聞各紙は「外部の専門家が管理組合の理事や監事に就任できる」「地元のお祭りなどに使う自治会費などを管理費から支出するのは不適切」といった改正点に着目して報じたが、マンション住民にもっとも大きな影響を与える変更が「議決権割合」だ。
マンションの管理組合総会が投票で物事を決めるとき、これまでは「1戸1票」が原則だった。我が家も隣も上階も同じく1票だったが、その「平等の原則」が崩れるのだ。
個人向けに不動産コンサルティングを行なう、さくら事務所のマンション管理コンサルタント・土屋輝之氏が解説する。
「今回の改正で、専有面積に応じた議決権の付与が考えられると示されました。簡単にいうと、広い部屋に住んでいる人ほどマンション全体の決めごとに関して決定権が大きくなる、発言力が強くなるということです」
25平米の部屋には1票、50平米の部屋には2票、100平米の部屋には4票といった分かりやすい分配が現実味を帯びる。それだけではない。
「部屋のある階数や方角を考慮した価値の違いに基づく価値割合を基礎として、議決権の割合を定めることも考えられるとしています」(同前)
10階に住む人が2階に住む人よりも多く票を持ち、南向きの部屋に住む人が北向きの部屋に住む人よりも多く票を持つといったことが起こり得る。つまり、資産価値の高い部屋の持ち主の発言権が増すことになるのだ。
なぜ高所得者が幅を利かせ、低所得者の肩身が狭くなるような改正がなされてしまったのか。
「マンションの高層化・大型化への対応です。タワーマンションの場合、同じマンションの住戸ごとに、資産価値に大きな差が生じます。タワーマンションが増える以前は、面積や間取りが均質な物件が多かったので1戸1票が大半でしたが、その常識が通用しなくなってきているのです。
もともと管理費や修繕積立金などは専有面積に応じて徴収されているので、議決権についてもこの考え方を導入するのは合理的と言えます」(同前)
そもそも「標準管理規約」とは、デベロッパーが新築マンションの管理規約を作成する際の基準であり、今あるマンションの規約がこれに則ってただちに変更されるわけではない。
しかし、「既存物件でも大きな影響を受けるのは避けられない」と指摘するのは住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。
「『国交省から新しい指針が出たから』と、今回の改正を“錦の御旗”にして、管理規約を見直そうとする管理組合も少なからず出てくるはずです」
つまり、すべてのマンション住人にとって今回の改正は無関係とは言えないのだ。