緊急記者会見で鈴木敏文・セブン&アイ・ホールディングス会長が退任を発表したのは4月7日のこと。その理由は、鈴木氏が提案した子会社のセブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長を退任させる人事案が取締役会で否決されたことと説明したが、限られた会見時間の中での説明には数々の疑問が残った。
日本最大の流通グループ、セブン&アイを率いるカリスマの電撃退任の背景には、「息子への世襲をめぐって、創業家との確執があった」との憶測が飛び交った。
事実とすれば、まさに両家の「お家騒動」である。その真相を聞くべく自宅を訪れた本誌記者に、“流通の神様”が口を開いた。創業家、伊藤雅俊・名誉会長がなぜ鈴木氏の人事案に反対したのだろうか。
──今まで伊藤家からは、経営についてすべて任されていたのでは?
「伊藤家からは、今までは『際(きわ)まで全権委任する』と言われていたんですが、今回は伊藤さんとも会ってないんで。今まではほとんど経営は私中心に任されていたんですが……。ここにきて創業家とゴタゴタするようなことになれば、経営者として話にならないと思ったんです」
──全部任されていたのに、今回だけは違ったのか?
「それはちょっと……」
首をかしげて言い淀んだ。
──わからない?
「(軽く頷く)ゴタゴタすること、嫌いだから」
そう口を濁したが、一方では気になる表現もあった。記者が「創業者であれば息子に継がせたいと思うものでは?」と訊ねた際の答えである。