芸能

上條恒彦 「やりたい」に束縛されるといい芝居はできない

上條恒彦が語る芝居の覚悟

 歌のヒットによって歌手から俳優へと活動の幅が広がった上條恒彦は、ミュージカルでも活躍するようになった。ミュージカルで共演した森繁久彌など役者としての大先輩と共演した時に感じた言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

 * * *
 森繁久彌主演のミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』で、上條恒彦は肉屋・ラザールの役で出演。その後一度は主役を演じ、西田敏行主演版では再びラザール役に戻っている。

「ラザールは僕の前は谷啓さんがおやりになっていまして、ブロードウェイの芝居を大きく広げてお作りになった。僕はその方向ではなく、できるだけシンプルに作りたくてかなり苦労しました。

 偉大な森繁先生と一対一で芝居するわけですから、そりゃあ勉強になりました。セリフ一つにしても、息を抜くタイミングとか、声の張り方とか。よく観察しました。森繁先生は何もおっしゃいません。怒られたこともないです。でもそれが怖かった。気の抜けない日々でした。

 主役をやった時は、プロデューサーに『これはジョーさんの役じゃないと思うけど、シゲさんのたっての希望だからやってよ』って言われたんですよ。魅力ある役ですから、やりたいと思っていました。でも、できるとは思っていませんでした。というより、できない。だから言われた時はビビりました。それでも『こんな機会はもう巡ってこない』と引き受けました。

 西田さんの時は、プロデューサーに『ジョーさん、やりにくいだろうけど、前の役に戻ってよ』と言われて。『ありがとうございます!』と受けました。

 西田さんは大変だったと思います。あの人は僕と違って根っからの役者ですから、凄いプレッシャーだったんじゃないですかね。森繁先生の時はぶらさがっていればよかったのですが、今度の僕のやることは、まず西田さんを支えることだと思いました。どうやって支えたかというと、毎晩一緒に真剣に飲んだくれたくらいのことですが」

 映画『千利休~本覺坊遺文』での山上宗二やNHK大河ドラマ『武田信玄』などでは、歴史上の人物を演じてきた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン