1億総活躍国民会議のメンバーでもあるタレントの菊池桃子さんが、〈入っても入らなくてもどちらでもいいはずなのに……〉と発言して物議をかもすなど、最近なにかと話題になっている全国公立小中学校のPTA。
今年4月に都内某公立小学校のPTA会長に就任した近藤豊氏(仮名・43歳)が、PTA活動の実態と裏側について暴露する。
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建前上は入退会自由の“任意ボランティア団体”でありながら、実際は「保護者の全員参加」が不文律となっているPTA。私がその会長に抜擢されたのは、校内の「選考委員会」に目を付けられたことがきっかけでした。
「選考委員会」とは、PTAの次期本部役員(会長・副会長・書記・会計)を選出する役員のスカウト専門部隊です。学校によって「指名委員」「推薦委員」と呼び名は異なりますが、PTAの“顔”となる会長以下、本部役員の選考、勧誘、推薦を主なミッションとしています。近ごろは、こうした任務に携わる委員を“PTAハンター”と呼ぶ向きもあるそうです。
選考委員は毎年秋口になると、全保護者に無記名の「役員推薦用紙」を配布し、次期PTA本部役員の選出を開始します。ここで名前が上がった人には、選考委員による執拗な電話勧誘が繰り返され、時にはアポ無しの自宅訪問を受けることになります。
「○○さんは平日でも学校行事に積極的に参加する熱心なパパです!」と、見知らぬ保護者から“タレコミ”された私もその一人でした。上の娘が小学生だったころ、役員を経験していたことも推薦理由になったようです。
その後、私は選考委員からの電話勧誘を断り続けましたが、ある日、業を煮やした委員たちが総出で自宅に押し掛けてきました。
「○○さんはママたちに評判が良いからぜひ!」
「頼り甲斐のある男性が入るとPTA活動が盛り上がるんです!」「ここまで言われて辞退するなら○○さんの評価はガタ落ちですよ」
硬軟織り交ぜ候補者の心を揺さぶり、次第に断りにくい状況を作り出す彼女たちは、まるで絵画商法のセールスレディのようです。結局、私は彼女たちに押し切られ、「一期限り」という条件付きで、しぶしぶPTA会長を引き受けることになりました。
【PTA会長のメリットとデメリット】
しぶしぶ、とは言うものの、PTA会長になろうという人間は、大なり小なり“スケベ心”を抱いているのも事実です。異性に対するスケベ心だけではなく、自身の仕事や商売へのメリットを計算し、会長を引き受ける方も少なくありません。
特に、下町エリアではその傾向が顕著です。実際、私の地区にある小学校のPTA会長はすべて男性で、その8割は地元で商売を営む自営業者や会社経営者です。彼らは比較的、時間にも融通が利くので、地域の様々な会合に積極的に参加して顔と名前を売っています。「町会や自治会との繋がりを深め、将来的に区議会議員を目指す」という野心家もいました。
中には、校長と懇ろになり、自身が会長を務める小学校の修繕工事を受注してしまった工務店の社長さんもいました。ところが、彼は工事が終わった途端、「一身上の都合」を理由にPTA会長を辞任。工費が少額だったため大騒動には至りませんでしたが、同じ学区内では今も語り草になっています。
しかしながら、このように何かしらのメリットがなければ、PTA会長はまさに「骨折り損のくたびれ儲け」。サラリーマン会長の場合は更に悲惨で、PTA活動参加のために遅刻・早退を繰り返し、上司に最後通牒を突き付けられている人もいます。
なお、私たち会長は名前と顔が広範囲に知れ渡っているため、地元での行動には慎重さが求められます。酔っ払って立ちションでもしようものなら犯罪者扱いは必至ですし、歩行中の信号無視や歩きタバコも当然、許されません。PTAは私的ボランテイア団体でありながら、その長は公人と同様の意識を求められるのです。