春の運動会シーズンが到来。近年は子供の学校行事だけでなく、職場のレクリエーション目的で運動会を復活させる企業も増えた。そして、社内イベントの目玉として運動会とともに再び恒例化の兆しを見せているのが、「社員旅行」である。
人事労務分野の情報機関、産労総合研究所が2014年11月に発表した【社内イベント・社員旅行等に関する調査】によれば、アンケート集計企業122社のうち、社員旅行を行なっている企業は46%だった。
この割合だけ捉えると決して多くはないが、同調査で1990年代には9割近くもあった社員旅行の実施率は、バブル崩壊後の景気後退やコスト削減などの理由から、2004年には36.5%にまで減っていたため、徐々に見直されているとみるべきだろう。
しかし、職場の飲み会やゴルフコンペ、花見など社内イベントには“全力で参加したくない”と拒む若手社員も多いご時世。敢えて社員旅行を復活させる必要はどこにあるのか。
「昔の社員旅行といえば、職場の人間関係を円滑にして組織力を強化する目的しかありませんでした。だから、昼間は定番の観光地や土産店を団体でぞろぞろ見て回り、夜の宴会は役員や管理職が上座に座り、若手はお酌をして回る。まったくレクリエーション的な要素がなかったのです。
しかし、いまどきの社員旅行は違います。折からの人手不足と離職率の高さで企業側も人材を手放したくない。そこで、会社が旅費負担を増やしてでも、海外に行ったり高級ホテルに泊まったりと旅行のランクを上げ、とにかく社員に喜ばれようと趣向を凝らしています。
行き先や現地での行動予定などは社員にアンケートを取って決める。もちろん、夜の席も無礼講。また、いつも目立たない若手を褒めたり、豪華賞品が当たるビンゴ大会を企画したりと、至れり尽くせりの社員旅行を計画する企業が増えました」(経営コンサルタント)
昨年、岐阜県にある電気・設備資材メーカーの未来工業が、全額会社負担でイタリアの世界遺産を巡り、旅の思い出を写した写真コンテストで〈有給休暇を1年間取得できる権利〉など仰天の賞品を用意するなど、豪華すぎる社員旅行と話題になった。
実際に街中で「あなたの会社の社員旅行は?」と聞いてみると、未来工業級とまでいかなくても、豪勢な社員旅行を実施している企業が意外にも多いことに気付く。
〈最新施設の視察も兼ねて、ラスベガスへカジノツアーに行った〉(音響関係)
〈年間の売り上げを達成したら従業員家族も連れてグアムへ行くのが恒例〉(飲食店経営)
〈毎年2泊3日で沖縄の高級リゾートホテルに行く。現地行動は自由〉(建設関係)