介護費用や、徘徊による事故の賠償など、老いた親を持つ子供にのしかかるコストとリスクは大きな社会問題となっている。この難題に対し、新著『もう親を捨てるしかない』(幻冬舎新書)で「親を捨てる」という衝撃的な問題提起を行なったのが、宗教学者の島田裕巳氏だ。島田氏の「親捨て」論に、賛否両論の意見が湧き上がった。
「親孝行を否定する主張こそ家族を解体する」と、島田氏に真っ向から反論するのは、評論家の金美齢氏だ。
「『家族という病』のような本がベストセラーになるように、近頃は家族の絆を軽視する風潮がありますが、全くの誤りです。親が子に与える愛情や、親の愛に応える子の恩返しの気持ちは、金銭や労力では測れません。介護システムが限界にきて親を背負いきれない現実には同意しますが、『親捨て』という言葉で解決を図るのは暴論です」
評論家の小沢遼子氏も「親捨て」の代償は自らに返ってくると指摘する。
「いくら親子でも介護を個人で引き受けるのは無理です。そのため社会で引き受けるという意味で介護保険料が徴収されるようになりましたが、介護の社会化の議論はまったく進まず、介護殺人は起こり続けている。施設に入れたからといって安泰ではなく、そこで給料が安い介護士に突き落とされてしまうかもしれません。
親を捨てても、孤独死してアパートの一室で腐ったら、結局、社会が後始末をしなければならない状況になる。簡単に捨てるといっても、その捨て方が大きな問題なんです」
仮に子供が親を捨てても、社会が面倒を見てくれるとしよう。だが、その社会を支えているのは結局は自分たちなのだ。